研究課題/領域番号 |
23790840
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
早川 朋子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30420821)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 血管平滑筋細胞 / iPS細胞 / 動脈硬化 |
研究概要 |
応募者は将来の臨床応用への期待も考慮しiPS細胞を用いたRA添加によるSMC分化培養系を確立した。現在知られているSMC分化マーカーの発現の変化を調べた結果、未分化細胞、SMC前駆細胞、胎児期SMC、成熟SMCと、時系列にそった分化マーカーの発現誘導が順次おこった。また細胞免疫染色の結果、ほとんどの細胞がSM-MHCを発現しており、非常に高頻度な培養系であることがわかった。これより、本培養系は、RAのSMC分化促進作用の解析に非常に有用であると考えた。 また、最初のRA刺激がSMC分化誘導に必須であるため、RAの2種類の受容体であるRAR, RXRのどちらが働いているのかを調べた。本培養系では、両方に作用するRAを用いているが、RAR特異的に作用するRA類似体Am80と比較したところ、同程度の分化が観察された。これより、RAは主にRARを介して働く事がわかった。ついで、転写因子であるRARによって発現が誘導される遺伝子を、定量的RT-PCRを行って解析した。RA添加6から12時間後にXの発現が誘導されていた。そこで、XがRAによって直接誘導されるのか調べるために、Xの転写開始点上流3kbp中にRAR結合配列が存在するかをコンピュータ解析によって調べた。さらに、ChIP assay法を用いて、RA存在下においてRARが予想部位に結合する事を確認した。 XはDNA結合タンパク複合体を構成する因子であり、幅広い遺伝子発現調節に働くため、XがSMC分化を特異的に誘導しているとは考えにくい。そこでXの下流にSMC分化特異的に働く因子が存在するのではないかと考えた。このX下流因子をYと仮定し、Xを含む複合体がゲノムに結合し、Yの発現が誘導されるのではないかと仮定した。Yは、転写因子またはmiRNAと推測している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
転写因子であるRARによって発現が誘導される遺伝子を、定量的RT-PCRを行って解析した。RA添加6から12時間後にXの発現が誘導されていた。そこで、XがRAによって直接誘導されるのか調べるために、Xの転写開始点上流3kbp中にRAR結合配列が存在するかをコンピュータ解析によって調べた。さらに、ChIP assay法を用いて、RA存在下においてRARが予想部位に結合する事を確認した。 XはDNA結合タンパク複合体を構成する因子であり、幅広い遺伝子発現調節に働くため、XがSMC分化を特異的に誘導しているとは考えにくい。そこでXの下流にSMC分化特異的に働く因子が存在するのではないかと考えた。このX下流因子をYと仮定し、Xを含む複合体がゲノムに結合し、Yの発現が誘導されるのではないかと仮定した。Yは、転写因子またはmiRNAと推測している。
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今後の研究の推進方策 |
siRNAによる抑制実験によるXの同定、ChIP sequence及びDNA arrayの結果をコンピュータ解析する事によるYの推定、siRNAによるYの同定を行う。Y遺伝子欠損マウスと、テトラサイクリン(Tet)による遺伝子発現制御を利用したY遺伝子改変Tet-OFFマウスの作製を行う。分化SMCが移植後も正常な機能を維持できるか調べるためにマウスへ移植し、SMC分化培養系確立と移植を論文発表する。(H25年度)Y遺伝子改変マウスを用いて胎児期とアダルト期における心血管系の異常を解析する。また、Yの発現部位と頚動脈結紮モデルの解析を行う。X, Yの同定とSMC分化における働き、動脈硬化との関係を明らかにし、論文発表する。 本培養系で得たSMCを脱分化させる培養系を新たに確立する。脱分化SMCと頚動脈結紮モデルにYを発現させ、Yの動脈硬化病態改善の可能性を解析し、論文発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
XのsiRNAをiPS細胞に導入し、SMC分化が阻害されるかを調べる。Xの候補に挙がっている因子はFig.4-6で示したもの以外にも数種類あるため、これらを順次siRNAによる阻害実験を行い、最も強く阻害するXを決定する。(工夫点) siRNAの高い導入率が本実験において必須である。iPS細胞へ高率にsiRNA導入が可能なAccell siRNA試薬を使用する。一種類の因子だけでは分化抑制の度合いが低い可能性も考えられ、候補となる2種類の因子を同時に抑制するが、この場合はレトロウィルスを利用してsiRNAを導入する。レトロウィルスは非常に高頻度にiPS細胞に感染し、また抗生物質によってsiRNAが導入された細胞を選択する事ができる。
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