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2013 年度 実施状況報告書

iPS細胞の血管平滑筋細胞分化・脱分化における転写機構解析と動脈硬化治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 23790840
研究機関東京大学

研究代表者

早川 朋子  東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30420821)

キーワード血管平滑筋細胞 / 細胞分化 / 動脈硬化
研究概要

脱分化SMCであるラット冠動脈由来SMCに対してNsd1発現抑制を試みたところ、細胞の形態が平滑筋様へと変化した。RT-PCR法とRNA sequenceを行った結果、Nsd1抑制によってa-SMA、SM-MHC、Desmin、Calponin等のSMC分化マーカーの発現が大きく上昇し、さらに発現変動がみられた遺伝子群には、SMC特異的遺伝子や血管病態関連遺伝子が有意に含まれていた。これより、Nsd1抑制により脱分化SMCは分化SMCへ変化することがわかった。
Nsd1はヒストンメチル化により遺伝子発現を正と負に誘導するといわれているが、その作用機序はほとんど不明である。そこでNsd1抗体を用いてChIP-sequenceを行いSMCにおけるNsd1結合領域を解析した結果、転写開始点付近に集中していることが分かった。また、Nsd1抑制によって発現上昇し、かつNsd1の結合がみられた遺伝子は合計24個あり、その中には、SMC収縮に重要なカルシウムシグナルに関連する因子が13個含まれていた。
ChIP-sequenceよりFcgr2a遺伝子のプロモーター領域にNsd1の強い結合が観察された。そこでFcgr2a遺伝子のプロモーターを用いてルシフェラーゼアッセイを行ったところ、Nsd1の強制発現によってルシフェラーゼ活性の上昇が観察された。これにより、Nsd1はFcgr2aプロモーター領域に結合して発現を誘導していることがわかった。
以上から、Nsd1はSMCの形質転換に重要であること、Nsd1抑制によって脱分化SMCを分化SMCへ誘導できることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)マウスiPS細胞の分化誘導系、ラット血管平滑筋細胞の脱分化培養系、マウス頚動脈けっさつモデルを用いて、血管平滑筋細胞の分化に重要な遺伝子として、ヒストン修飾酵素であるNsd1が特定できたため。
2)Nsd1抗体を用いたChIP-sequenceのデータを得ることができ、Nsd1がゲノム上にどのように結合しているのか解明できたため。
3)Nsd1が直接発現を制御する遺伝子として、Fcgr2aを特定することができたため。
4)Nsd1が細胞内カルシウムイオン濃度を調節する遺伝子の発現を制御している可能性を示唆できたため

今後の研究の推進方策

Nsd1の構造として、多くのドメインが含まれていることが知られている。それらは2つのPWWPドメイン、6つのPHDドメイン、AWSドメイン、SETドメインがあり、その中でもSETドメインはヒストンメチル化に働くことが知られている。
Nsd1は転写の促進と抑制の両方に働くとの報告があるが、それらの詳細はほとんど知られていない。そこで、今回、これらのドメインに変異を導入したNsd1の発現ベクターを多く作製し、これらのドメインがどのように転写制御に働くかを解析する。
これまでの研究で、Fcgr2aのプロモーター領域にNsd1が結合することが分かっているので、Nsd1変異導入発現ベクターとFcgr2aプロモーターを用いてルシフェラーゼアッセイを行う。

次年度の研究費の使用計画

今年度中にNsd1遺伝子欠損マウスを作製する予定であったが、それに間に合わなかったため次年度に作製する予定である。遺伝子欠損マウス作製には非常に費用がかかるため、今年度の研究費を全額使用してしまうと、次年度に作製することができなくなってしまうので、今年度の研究費の1部を次年度に使用する事としたため、次年度使用額が生じることとなった。
Nsd1遺伝子欠損マウスの作製を行う。Nsd1変異導入発現ベクターを構築するため、高効率コンピテントセル・Compitent highを購入する。また、ルシフェラーゼアッセイを行うために、プロメガ社のLuciferase Assay Systemsを購入する。動物実験を行うため、 マウスを購入する

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] NSD1 Controls Smooth Muscle Phenotypic Modulation

    • 著者名/発表者名
      早川朋子
    • 学会等名
      日本循環器学会
    • 発表場所
      東京

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公開日: 2015-05-28  

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