研究概要 |
AFに関するGWASのメタ解析によって4q25領域およびZFHX3をはじめとする10の遺伝子座が同定されている.また日本人のGWAS(AF症例1,145人,対照症例4,850人)では,極めて有意であった4q25領域を研究の対象とした。タンパク質コード遺伝子のない4q25領域はGWASで関連を指摘されているがAF発症に関する詳細なメカニズムは不明である.150kb離れて存在するPITX2cはPV sleeveの形成の際に左房内の間葉系細胞から心筋細胞へ分化させることが示されており,4q25領域がPITX2領域へ遠隔的に制御していると考えられている.4q25上の全SNPから連鎖不平衡解析で23の候補SNPに絞り,cis制御エレメントを探索した.間葉系細胞ではrs4611994周辺においてenhancer mark(H3K4me1)とsilencer mark(H3K27me3)の結合を認めるbivalentな状態で,これを心筋細胞へ分化誘導したところsilencer markが外れ,PITX2の発現上昇を認めた.クロマチン構造捕捉アッセイで分化誘導によってダイナミックなchromatin loop構造を形成し4q25とPITX2が相互作用していることを明らかなとなった.リスク・保護アレルをLuciferase vectorに組み込んだReporter assayではアレルによってenhancer活性が異なっており,このSNP周辺のcis制御エレメントがPITX2発現を制御していることが示された.臨床データとSNPとの関連については本学附属病院に通院するAF患者の発症年齢について,219人のAF症例を遺伝子型で分けてKaplan-Meyer曲線を使って調べたところ,保護アレルとリスクアレルでは発症年齢が最大5年早まることがわかった.遺伝的な素因によるAFリスクが確認された.
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