研究課題/領域番号 |
23790843
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
嘉嶋 勇一郎 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (70545722)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ヒアルロン酸 / 血管平滑筋 / 動脈硬化 |
研究概要 |
平成23年度の研究計画は、wild type miceとHAS-SM22α mice(血管平滑筋:VSMCのみ特異的にヒアルロン酸を過剰発現させたマウス)よりVSMC(vasucular smooth muscle:血管平滑筋)を採取し、主にin vitro実験を行うことであった。(1)まず最初にそれぞれのVSMCの性質を検討する(遊走能や増殖能など)。(2)培養VSMCにヒアルロン酸を添加し、性質の変化を検討する。(3)VSMCのサイトカイン産生能や炎症性サイトカインへの反応を検討する。これらはいずれも終了し、ヒアルロン酸によるVSMCの作用に関する基本的検討を終了することができた。 平成24年度の研究計画としていた、主にヒアルロン酸による細胞内シグナル伝達を検討することにより、ヒアルロン酸がVSMCの遊走能や増殖能を亢進させるメカニズムを検討に関しては、ヒアルロン酸がCD44を介した細胞内シグナル伝達経路を確認することができ、予定よりも速やかに研究が進行している。このシグナル伝達経路と動脈硬化との関連は知られていなかったが、新たに動脈硬化進展のメカニズム解明の直接的なデータが得られ、VSMCのCD44を介したシグナル伝達機構を確認することができた。 今後はさらに薬剤や阻害剤を使用することで、今回確認できたヒアルロン酸による血管平滑筋への作用を抑制できるかどうかを検討し、新しい治療開発へ進めていくことを目標としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、23年度の実験計画はすべて終了させることができた。また、24年度の実験計画の中心であった、血管平滑筋におけるヒアルロン酸の作用メカニズムの解明については、シグナル伝達を中心に解明することである。それについては、ヒアルロン酸が血管平滑筋表面にあるCD44を受容体とし、ERK1/2のリン酸化およりRhoを活性化させることにより、血管平滑筋の増殖能および遊走能を高めることを示すことができ、現在までに終了させることができている。 上記のように現在までの研究計画は、予定よりも速やかに進行させることができ、順調に進行していると考えている。現在までにAmerican Heart Association、日本循環器学会総会にて口頭発表に採択され、さらに現在までの成果について論文作成し提出中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、現在までの基礎的検討に基づき、さらに詳細なメカニズム解明を目指すことである。具体的には、ヒアルロン酸による血管平滑筋に対する作用がCD44を介すことから、その伝達阻害による動脈硬化抑制効果の確認と、血管平滑筋によるヒアルロン酸合成能に関する検討に移っていくことを考えている。 最終目標は、ヒアルロン酸を介した新しい動脈硬化進展抑制の治療開発にである。それに向けて、まずはさらにマウスによる基礎的研究を進行させていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の大部分は実験器具、抗体やシグナル伝達阻害剤などの実験試薬、マウス購入および飼育費に使用する。 当初の計画で見込んだよりも、安価に実験を完了させることができたため、次年度使用額が生じている。本年度の研究は、高価な抗体やシグナル伝達阻害剤をさらに多く使用する必要があるため、計画的に次年度使用額を有効に活用したい。また、実験成果について、国内主要学会だけでなく、ヨーロッパ心臓病学会やアメリカ心臓病学会など、海外の主要学会への発表を積極的に行う費用に使用したい。
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