研究概要 |
ヒト動脈硬化血管およびマウス血管障害モデルのいずれにおいても、新生内膜肥厚部位にHAが産生していることを確認した。マウスにおいて、HAの特異的合成素材剤である4-methylumbelliferone (4-MU)を経口投与し、血管障害モデルを作製すると、新生内膜肥厚が著明に抑制された。次に、野生型マウス(C57BL/6)の大動脈より血管平滑筋細胞を採取し、ヒアルロン酸(Hyaluronan: HA)が血管平滑筋細胞(vascular smooth muscle cells: VSMCs)の遊走能に与える作用を、Trans-well chamber systemおよびスクラッチ・アッセイにて検討すると、HA刺激によりVSMCsの遊走能に著明な増加が見られた。HAは、CD44-RhoAシグナル活性化により、VSMCsの遊走能を高めることが示した。引き続き、HAがVSMCsの増殖能に与える作用について検討した。HAは、CD44 - ERK-1/2シグナル活性化により、VSMCsの増殖能を高めることを確認した。最後に、HAS2 cre-lox conditional transgenic strategyにより、VSMCs特異的にHA過剰産生モデル(cHAS/CreSM22α)を作製し、血管障害後の新生内膜肥厚の作用について検討したところ、著明な新生内膜肥厚形成が見られた(内膜/中膜比: 1.45±0.03 (cHAS/CreSM22α) vs. 0.54±0.07 (cHAS2) and 0.50±0.04 (CreSM22α), p < 0.001)。また、cHAS/CreSM22αの大動脈より採取したVSMCsは、コントロールのマウス(cHAS2 、CreSM22α)に比して、IL-6, MCP-1, 酸化ストレス産生能が有意に高いことが確認された。
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