研究課題/領域番号 |
23790844
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
嶋野 祐之 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (80597849)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 アメリカ・ドイツ |
研究概要 |
本年は遺伝子改変マウスの作成(すでに作成しておいたtargeting constructを用いてFstl1flox/floxマウスの作成し、このマウスとCre/αMHCマウスを交配させ、心筋特異的なFstl1ノックアウト(Fstl1-CKO)マウスを作成した。またFull lengthのFstl1遺伝子をαMHC promoterに導入したマウス(Fstl1-TG)を作成した)を完成させ、その遺伝子改変マウスにおける心機能の解析を行った。作成したFstl1-CKOマウス及びFstl1-TGマウスの表現系を経時的に評価したが、baselineでは対照群のlittermatesマウスと比較して変化は見られなかった。このためFstl1-CKOマウス及びFstl1-TGマウスに胸部大動脈のbandingを行い胸部大動脈狭窄圧負荷による肥大心モデルを作成し、心肥大の評価、心肥大に伴う心不全を術後4週までの死亡率、心重量を比較検討、また心エコーを用いて左室拡張末期径、左室心筋壁厚、左室駆出率を経時的心機能検査による検討した。摘出心に対してMasson-trichrome染色標本を用いて、間質.血管周囲繊維化や炎症細胞浸潤の経時的変化を比較検討した。これら全ての結果より圧負荷による心肥大モデルにおいてFstl1が心筋リモデリングに対する作用を有することを確認した。上記の結果をアメリカ科学アカデミー紀要(Cardiac myocyte follistatin-like 1 functions to attenuate hypertrophy following pressure overload. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Oct 25;108(43):E899-906.)に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定のin vivo(遺伝子改変マウス)における解析は概ね終了したため、当初の目標に対して50%程度まで達成したと考える。今後はそのシグナル伝達を探索するためαアドレナリン、アンジオテンシンII、エンドセリンIなど各種の肥大刺激に対するFstl1の効果を検討する。具体的にはFstl1はアデノウイルスベクターを用いた遺伝子導入だけでなく、独自にSF-9 cellよりrecombinant Fstl1 proteinを精製して使用する。シグナル伝達経路の評価に関しては、種々の細胞内シグナル伝達系物質 (特にAMPK, Akt, SMAD, MAPK等) をウエスタンブロッティング法、炎症性サイトカインを定量Real time PCR法により評価する。
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今後の研究の推進方策 |
各種肥大刺激を添加し、その心筋細胞における細胞内シグナル伝達を検討する。具体的には、ラット培養心筋細胞における種々の細胞内シグナル伝達系物質 (特にAMPK, Akt, SMAD, MAPK等) をウエスタンブロッティング法、炎症性サイトカインを定量Real time PCR法により評価する。またRNAi methodにてDIP2Aレセプターノックダウンし、シグナル伝達系物質の発現やサイトカイン分泌、シグナル伝達の評価を行う。しかしながら心肥大の病態機序におけるこれ以外のレセプターの可能性を探るために、recombinant Fstl1 proteinを用いてMass spectrometryを行い新たなレセプターを同定する。またFstl1は心不全や急性冠症候群といった心臓疾患との関連が明らかにされている分泌性蛋白であるため、今後はドイツのKai Wollert教授との共同研究によりbiomarkerとしての臨床的意義について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
心筋細胞の単離のためのラットやsiRNAなどのreagentの購入や急性冠症候群や重症心不全患者からの血清FSTL1を測定するためドイツからの輸送費など。
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