研究課題/領域番号 |
23790844
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
嶋野 祐之 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80597849)
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キーワード | 国際情報交換 ドイツ / 国際情報交換 アメリカ |
研究概要 |
本研究は、心不全におけるFstl1の役割を検討し、心不全の病態解明及びFstl1をターゲットにした新たな心不全治療戦略の提示を目指す事にある。まず初めに遺伝子改変マウスの作成し、その心機能の解析を行った。作成したFstl1-CKOマウス及びFstl1-TGマウスのbaselineでの心臓における表現系は認めなかったため、Fstl1心筋特異的欠損マウス及びFstl1心筋特異的過剰発現マウスに肥大心モデルを作成し心臓の表現型を検討したところ、圧負荷による心肥大モデルにおいてFstl1が心筋リモデリングに対する作用を有することを確認した。上記の結果をアメリカ科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Oct 25;108(43):E899-906.)に報告した。 本年は、これを発展させ同様な発現形式をとるとされるTGF-beta familyの中でGDF15との関連性を証明し、humanにおける急性冠症候群での血中のFstl1濃度と予後との関連を有することを報告 (Clin Chem. 2012 Aug;58(8):1233-41.) した。また同じfollistatin familyの中でFstl3の発現形式や心肥大における役割についても報告(J Cardiovasc Transl Res. 2012 Dec;5(6):814-26.)した。これらの心筋分泌因子についての総説をアメリカ循環器病学会誌(Cardiokines: recent progress in elucidating the cardiac secretome. Circulation. 2012 Nov 20;126(21):e327-32.)に報告した。今後はこれを発展させ、心筋由来分泌因子の心不全における役割を検討する方向である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、遺伝子改変マウスにおける心機能解析としていたが、baselineでの表現型を認めなかったため、心筋障害モデルにおいて検討してきた。これに関しては概ね終了したため、当初の目標に対して70%程度まで達成したと考える。今後はその心筋細胞における詳細なシグナル伝達を探索する。また各種の肥大や虚血刺激に対するFstl1の効果を検討する。具体的にはFstl1はアデノウイルスベクターを用いた遺伝子導入だけでなく、独自にSF-9 cellよりrecombinant Fstl1 proteinを精製して使用する。シグナル伝達経路の評価に関しては、種々の細胞内シグナル伝達系物質 (特にAMPK, Akt, SMAD, MAPK等) をウエスタンブロッティング法、炎症性サイトカインを定量Real time PCR法により評価する。またhumanにおける心不全の重症度の違いについてFstl1に差異があるかを検討する
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今後の研究の推進方策 |
各種心筋細胞刺激を添加し、その心筋細胞における細胞内シグナル伝達を検討する。具体的には、ラット培養心筋細胞における種々の細胞内シグナル伝達系物質 (特にAMPK, Akt, SMAD, MAPK等) をウエスタンブロッティング法、炎症性サイトカインを定量Real time PCR法により評価する。またRNAi methodにてDIP2Aレセプターノックダウンし、シグナル伝達系物質の発現やサイトカイン分泌、シグナル伝達の評価を行う。しかしながら心肥大の病態機序におけるこれ以外のレセプターの可能性を探るために、recombinant Fstl1 proteinを用いてMass spectrometryを行い新たなレセプターを同定する。またFstl1は心不全や急性冠症候群といった心臓疾患との関連が明らかにされている分泌性蛋白であるため、今後はドイツのKai Wollert教授との共同研究によりbiomarkerとしての臨床的意義について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は心不全患者からの臨床検体における各種心臓由来分泌因子の測定のため、各種抗体やELISAの購入を中心に研究費を使用する。
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