研究課題
1. アディポネクチン パラログ: C1q/TNF-related protein (CTRP)9の心血管保護作用を検討。アディポネクチンの心血管保護作用を検討する中で、アディポネクチン パラログ, C1q/TNF-related protein (CTRP)9を同定した。そこで我々はCTRP9の心血管病に対する作用を検討した。CTRP9はcAMPの増加により平滑筋でのERKの活性を抑制し、細胞増殖抑制効果を発揮した。その結果、マウスにおけるCTRP9過剰発現は血管傷害に伴う血管リモデリングを抑制し得た。アディポネクチン欠損マウスに対してCTRP9を投与しても血管傷害後の内膜肥厚は抑制されることから、CTRP9は、アディポネクチンと独立した血管リモデリング抑制作用を有すると考えられた(FASEB J 2013)。また、CTRP9の過剰発現は心筋細胞にて抗アポトーシス作用を発揮し、マウス虚血再灌流障害後の梗塞サイズを縮小した。虚血性心疾患においてもCTRP9は保護的に働くことが明らかとなった(JBC 2012)。2. マウス敗血症モデルにおけるアディポネクチンの心保護効果を検討。C57/BL6J野生型マウス(WTマウス)およびアディポネクチン欠損マウス(APN-KOマウス)に、LPS(10mg/kg)を単回腹腔内注射し、急性の心機能低下モデルを作成した。LPS投与6時間後の心エコーによる心機能評価では、WTマウスに比較してAPN-KOマウスで左室腔の拡大と心機能低下を認めた。現在その機序等を詳細に検討している。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題は、アディポサイトカイン分泌異常を特徴とする「脂肪細胞機能異常」と「急性心不全」、「急性腎不全」との関係、その重要性を明らかにすることを目的としている。現在までに、すでに、ドキソルビシンが引き起こす急性心不全でのアディポネクチンの役割を明らかとし、慢性腎臓病における臨床的なアディポネクチン測定の意義を見いだしている。また、平成24年度にはマウス敗血症モデル(LPS投与にともなう急性心機能不全モデル)を用いて、アディポネクチンの心保護効果を明らかとした。これらの検討の過程で、新規アディポサイトカインとして、アディポネクチン パラログ CTRP9を同定、その心血管病における意義も明らかとしつつある。従って本研究は、おおむね順調に進展しているものと思われる。
1. Acute Heart Failure (LPS投与に伴う心機能低下モデル等を利用)におけるアディポネクチンや新規アディポサイトカインの役割を、各種アディポネクチンレセプター遺伝子改変マウス(Calreticulin(flox/flox)、AdipoR1-KO、 AdipoR2-KO)等を利用したin vivoの系で、各種病態における役割とシグナル伝達経路を明らかにしていく。2. Acute Kidney Injury (AKI) におけるアディポネクチンや新規アディポサイトカインの役割を、我々が開発した、腎微小循環をリアルタイムに観察定量化するシステムを用いて、尿細管周囲毛細血管血流に焦点を当てた、イメージングの面から解析していく。そこでWT、APN-KO、APN-TG、各種アディポネクチンレセプター遺伝子欠損マウスを用いて片腎摘虚血45分再灌流傷害によるAKIモデルを作成、尿細管周囲毛細血管イメージングからのアプローチでAKIにおけるアディポネクチンや種々のアディポサイトカインの役割を検討する。3. 各疾患患者様のアディポネクチンや種々のアディポサイトカインの濃度を経時的に測定し、その臨床的意義を探る。
遺伝子改変マウスを数種類使用する。これらマウスを用いて、急性心不全、急性腎傷害モデルを作成し、機能解析を行うため、動物実験のための維持費、飼料費に研究費の多くを要する。また手術器具一式や、ELISA kitを用いた各種サイトカインの測定、siRNA法によるアディポネクチンや様々なアディポサイトカインの機能解析等は、本研究において重要な部分を占めるためかなり多くの経費を要すると考えられる。また研究成果を、積極的に学会、論文等に公表していくため、その点に関しても費用を要する。
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