研究課題/領域番号 |
23790846
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大橋 浩二 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (10595515)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | アディポネクチン / 心臓圧負荷モデル / 血管新生 |
研究概要 |
<血管内皮特異的なアディポネクチンの受容体欠損マウスの作成> ボストン大学からCOX-2, LKB1, カルレティキュリン(CRT), CD91のFloxマウスを譲り受け、血管内皮特異的なTie2-Creトランスジェニックマウスと交配中である。現在Tie2-Cre-COX-2, LKB1, CRT, CD91マウスが増えてきており、今後大動脈縮搾手術、アンギオテンシンIIインフュージョンモデルを作成していく。血管内皮細胞特異的なそれぞれの分子の欠損を確認するために、それぞれのマウスの肺をコラーゲン処理後、マグネットビーズにCD31, ICAM-2の抗体を結合させ、血管内皮細胞を単離することに成功し、Western blot法にて発現量の確認を行っている。<アディポネクチントランスジェニックマウス(APN-Tg)、アディポネクチン受容体(Adipo R1)欠損マウスの作成> 上記マウスに関してもボストン大学から譲り受け交配中である。APN-Tgに関しては今後、Tie2-Cre-COX-2, LKB1, CRT, CD91マウス、Adipo R1欠損マウスと交配していく。<新規アディポサイトカインの探索と血管新生作用の解析> 当研究室では以前より新規のアディポサイトカインの探索を行っており、新たにOmentin-1とアディポネクチンパラログであるCTRP-9, CTRP-12を見出している。Omentin-1に関しては下肢虚血モデルにおいて血管新生を促進すること(JBC 2012)、CTRP-12はインスリン感受性を促進すること(JBC 2011)、CTRP-9に関しては心臓虚血再潅流モデルにおいて保護的に作用することを報告した(JBC 2012)。今後これらの分子においても心保護作用の解析を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ボストン大学からCOX-2, LKB1, カルレティキュリン(CRT), CD91のFloxマウス、アディポネクチントランスジェニックマウス(APN-Tg)、アディポネクチン受容体(Adipo R1)欠損マウスを譲り受ける際、マウスの感染症検査において名古屋大学動物施設の基準に適合せず、一旦他施設でクリーンアップしてから名古屋大学に搬入することになった。その間にマウスの週齢が進み、妊娠、出産率が低下していたため交配するのに多大な時間が必要であった。またその後血管内皮特異的COX-2欠損マウスの圧負荷モデルの数を増やしているが、心臓超音波検査において心機能の低下が傾向は認めるものの有意差には至っていない。 マウスの準備に時間がかかっている間に、他の新規のアディポサイトカインの探索を行い、Omentin-1とアディポネクチンパラログであるCTRP-9, CTRP-12を見出している。Omentin-1に関しては下肢虚血モデルにおいて血管新生を促進すること(Maruyama S, Ohashi K et al. JBC 2012)、CTRP-12はインスリン感受性を促進すること(Enomoto T, Ohashi K et al. JBC 2011)、CTRP-9に関しては心臓虚血再潅流モデルにおいて保護的に作用することも報告した(Kambara T, Ohashi K et al. JBC 2012)。
|
今後の研究の推進方策 |
現在アディポネクチントランスジェニックマウス(APN-Tg)と血管内皮特異的Tie2-Cre-COX-2, LKB1, CRT, CD91欠損マウス、Adipo R1欠損マウスの交配を開始しており、数がそろい次第まずbasalのフェノタイプを解析した後、大動脈縮搾手術、アンギオテンシンIIインフュージョンモデルを作成していく。 またアディポネクチンパラログであるCTRP-9に関しては最近、血管内皮細胞においてアディポネクチン受容体(Adipo R1)を介して保護的に働くことが報告されている。我々も心筋細胞においてCTRP-9がAdipo R1を介してAMPキナーゼシグナルを活性化し、心臓虚血再潅流モデルにおいて保護的に作用することも報告している(Kambara T, Ohashi K et al. JBC 2012)。すなわちアディポネクチンパラログはアディポネクチンと受容体を共有している可能性も示されており、今回の検討においてアディポネクチンのみならずアディポネクチンパラログ(CTRP-9, CTRP-12)もアディポネクチン受容体システムを介して様々な心保護作用を発揮する可能性も十分考えられる。現在CTRP-9, CTRP-12のアデノウイルスを用いた過剰発現系で、血管新生と心保護作用について解析することを検討している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究では野生型マウス、血管内皮特異的CRT, CD91, COX-2, LKB1欠損マウス、Adipo R1/R2欠損マウスを使用、アディポネクチントランスジェニックマウスの作成にも着手、大動脈縮搾手術(TAC)の作成、機能解析を行なう事からマウスの維持費、飼料費に研究費は多く使用する計画である。また免疫染色等の組織評価は本研究において重要な部分を占めるため比較的多くの経費を要すると考える。さらにアディポネクチンパラログ,CTRP-9, CTRP-12の解析のためにこれらの分子のアデノウイルスの作成、精製費用にも使用する。さらにこれらの分子のトランスジェニックマウス、ノックアウトマウスの作成も検討しており、費用の一部を研究費から使用することも検討している。また結果をアメリカ心臓病学会、日本循環器学会総会、日本心臓病学会総会等で発表していく予定にしており、旅費も必要である。
|