研究課題/領域番号 |
23790848
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
牧山 武 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30528302)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 分子心臓病態学 / 不整脈 |
研究概要 |
・不整脈患者ゲノムDNA の遺伝子解析・機能解析 現在、全国の施設より1400家系、2400症例の家族性不整脈患者ゲノムDNAを集積し、遺伝子解析・病態解析を進めている。(滋賀医科大学呼吸循環器内科との共同研究)特に、QT短縮症候群(SQTS)は、心電図上、QT間隔短縮を特徴とし、心房細動や心室細動による突然死を引き起こす難治性心疾患として注目されている。我々は、SQTS患者、5家系中2家系にてKCNH2, KCNJ2遺伝子異常を検出した。その内、QTc 194msと著明なQT短縮を認める患者にて、新規KCNJ2遺伝子異常(M301K)を同定し、パッチクランプ法を用いた機能解析の結果、新たなSQTS発症機序として、KCNJ2電流の内向き整流性の障害を報告した。(Hattori T, Makiyama T, et al. Cardiovasc Res 2012)・新たな原因遺伝子の探索 --- 遺伝性不整脈疾患の多くはまだ原因遺伝子が不明であり、次世代シーケンシングを用いたホールエクソーム解析を開始している。(解析中)・疾患特異ヒトiPS 細胞を用いた疾患発症メカニズムの解明 現在、51例の家族性心疾患患者より検体採取を行い、順次、疾患特異的ヒトiPS細胞を作製し、解析を進めている。ラミンA/C遺伝子は、核膜の裏打ち蛋白をコードし、その異常により進行性伝導障害、心機能低下、心室性不整脈による突然死を来たす。2塩基欠失によるフレームシフト変異(S303fsX25)のラミンA/C心筋症患者より、iPS細胞を作製し、分化心筋の解析を進めている。遺伝子発現は、患者由来心筋細胞で約半分になっており、病態としてhaplo-insufficiencyが考えられた。(Makiyama T et al. アメリカ心臓病学会2011)他、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍についても解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・不整脈患者ゲノムDNA の遺伝子解析 現在、全国の施設より1400家系、2400症例の家族性不整脈患者ゲノムDNAを集積し、遺伝子解析を進めている。検出された遺伝子変異に関しては、遺伝型・病型解析、変異蛋白の機能解析を行っており、進行も順調である。・疾患特異ヒトiPS 細胞を用いた疾患発症メカニズムの解明現在、14例より疾患特異的ヒトiPS 細胞の作製が終了し、順次分化心筋の解析組織学的解析(免疫染色、電顕観察)、分子生物学的解析(RNA、蛋白定量)、電気生理学的解析(活動電位や各イオンチャネル電流記録)を進めている。iPS細胞作製、心筋分化手技は確立されており順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
・不整脈患者ゲノムDNA の遺伝子解析 引き続き、家族性不整脈患者の解析をすすめるが、特に候補遺伝子解析にて異常の検出されない家系において、ホール・エクソーム解析を用い、新たな原因遺伝子の発見を目指す。・疾患特異ヒトiPS細胞を用いた疾患発症メカニズムの解明 iPS細胞由来分化心筋の解析に際し、心筋の型が一様ではなく(心室型、心房型、洞結節型)、成人心筋に比べ、構造的、電気生理学的に未分化である点が課題となっている。組織特異的プロモーター用い心筋の型を可視化を導入し、心筋の型も考慮したより詳細な解析を目指す。また、疾患モデルとして確立した後、薬剤スクリーニングによる治療薬の検討を行う。・遺伝子異常の検出されない患者由来心筋細胞の解析既知の遺伝子異常の検出されない症例においてもiPS細胞作製をすすめ、マイクロアレイ、蛋白の機能解析などにより、異常を来たしている分子を探索する。分子が同定でき、遺伝子解析にて異常を認めれば新たな原因遺伝子の発見につながる。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に物品費(遺伝子解析やiPS 細胞樹立、培養、心筋分化、免疫染色用抗体、パッチクランプ等に用いる試薬代、使い捨てプラスチック器具費等)への使用を予定している。また、成果発表のための旅費として、年間、国内5万円、海外15 万円、論文関連費用(英語校閲費、投稿料、別刷り代)として年間本10 万円程度を予定している。
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