研究課題/領域番号 |
23790856
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
奥田 真一 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (90530212)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | リアノジン受容体 / ドメイン連関 / 肥大型心筋症 / 致死性不整脈 |
研究概要 |
肥大型心筋症(HCM)では、著明な心肥大とともに致死性不整脈により若年で突然死するハイリスク群が存在する。本研究では、HCMにおいて致死性不整脈を生じる機序として、拡張期の心筋細胞内Ca2+濃度上昇に着目し、心筋筋小胞体(SR)Ca2+放出チャネルであるリアノジン受容体(RyR2)機能異常により生じるCa2+漏出の抑制による心筋筋小胞体機能の改善によって拡張期のCa2+濃度上昇を防ぐことで、致死性不整脈の誘発を抑制するという新しい治療戦略の開発を目指す。現有する、家族性肥大型心筋症でみられたトロポニンT点変異部位であるGlu160欠損のHCM型トランスジェニックマウス(TG)では、心エコーで加齢に伴い軽度の心肥大と拡張機能障害がみられた。TGの心筋細胞を用いてSRのCa2+放出能の評価のために、RyR2からの局所的なCa2+放出であるCa2+sparkを測定した。コントロール状態で既にコントロールマウスと比してCa2+sparkは増加しており、イソプロテレノール添加で著明に増加した。また、心筋のCa2+動態を反映するCa2+ transientではpeakからの下降脚が著明に延長していた。さらに、RyR2機能異常のメカニズムで大きな役割を果たすRyR2のドメイン連関障害を是正させる、ダントロレンを同マウスの心筋細胞に添加したところ、Ca2+sparkが抑制され、Ca2+ transientが改善した。以上の結果は、これまでカテコラミン誘発性心室頻拍モデル等で既に致死性不整脈を誘導する機序として報告されてきたRyR2機能異常により生じるCa2+漏出がHCMモデルマウスにおいても生じていること、RyR2機能異常の一因であるRyR2のドメイン連関障害を是正させることで、Ca2+漏出が抑制され、催不整脈性を是正しうる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って実験計画、実行し、当初の計画通り、心臓の形態学的評価、心筋細胞におけるカルシウム放出能の評価を行い順調に進展している。また、RyR2機能を制御するドメイン連関の評価、RyR2機能を修飾するリン酸化などの評価、遅延型後脱分極の評価については現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に達成不十分であった項目について検討を行った上で、平成24 年度の計画に基づいて研究を進展する。特に、HCM型マウスにおけるRyR2機能をはじめとしたカルシウム制御についてのメカニズムを詳細に評価する。また、HCM型マウスにRyR2安定化薬を投与し、催不整脈性の是正、肥大の抑制についてのメカニズムを含めた検討を行う予定である。実験設備は整っており、今後も遅滞なく研究が遂行可能である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究の推進方策にのっとって研究を進展、遂行させるために研究費を使用する。平成23年度に購入予定であったが、バージョン等の兼ね合いで購入を見合わせた解析用コンピュータを購入予定である。これは、実験で得られるデータが大変膨大なデータ量であるために、データ保存、解析に必須である。また、RyR2機能を制御するドメイン連関の評価のための実験には、RyR2のアミノ酸配列の一部から新規に精製したペプチドの使用が不可欠であり、これはオーダーメイドであることから、非常に高価である。また、RyR2機能の修飾因子であるリン酸化などの評価のためのウェスタンブロティング、免疫染色等のための抗体、心筋細胞単離実験の試薬購入や、器具などの更新も必要であり、それらも高価であり、それらを中心に研究費を使用する。
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