研究課題/領域番号 |
23790858
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
有川 幹彦 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (20432817)
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キーワード | 生体機能利用 / 心機能保護 / コリンエステラーゼ阻害剤 / アセチルコリン |
研究概要 |
ACh分解酵素阻害剤のひとつであるドネペジルは内在性のAChレベルの上昇を引き起こす。副交感神経活動の活性化による抗炎症作用の分子機序を明らかにするために、マクロファージ細胞株(Raw264.7)において、内毒素(Lipopolysaccharide, LPS)刺激により惹起される炎症反応に対するドネペジルの効果を検討した。その結果、ドネペジル前処理により、LPS誘導性の腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor-alpha, TNF-α)やインターロイキン1ベータ(Interleukin-1 beta, IL-1β)のタンパク質発現量が有意に抑制された。この他にも、ドネペジルはIL-6やIL-18を含む多くの炎症性サイトカインの遺伝子発現量を有意に抑制した。このことから、ドネペジルはLPS誘導性の炎症反応に対する抑制効果を持つことが明らかになった。 本研究では、ACh分解酵素阻害剤を用いた副交感神経系への直接介入による大動脈瘤に対する内科的薬物治療法の確立を目的として、マウス腹部大動脈瘤モデルに対するドネペジルの短期的・長期的評価を計画した。しかしながら、塩化カルシウム誘発性の腹部大動脈瘤モデルが再現性に乏しく、ドネペジルの効果を評価でき得るモデルの作成にまで至らなかったため、安定したモデルを作成できるようにすることが急務であった。しかし、塩化カルシウムの濃度や処理時間、処理法について検討を行ったが、安定したモデル作成には至らなかった。研究の推進方策として検討していたApoEノックアウトマウスに対するアンジオテンシンII投与による腹部大動脈瘤モデルに対するドネペジルの効果は、既に報告されている。したがって、本研究では別の炎症モデル、例えば盲腸結紫穿孔による敗血症モデル、あるいは内毒素の腹腔内投与による敗血症モデルを作成し、ドネペジルの抗炎症作用を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年10月に第64回日本生理学会中国四国地方会があり、その当番幹事に所属教室が割り当てられた。地方会の開催に際して大会事務局を担当し、全地方会会員への連絡、参加申込の処理、名簿の作成、プログラムの作成、生理学会への事後報告などの業務を請け負ったため、時間的な制約から、本年度に計画していた塩化カルシウムによるマウス腹部大動脈瘤モデルの作成法の検討や、マクロファージ培養株を用いたドネペジルの抗炎症作用の検討を十分に行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、上記内容の検討に加え、新たにマウス敗血症モデルに対するドネペジルの効果を検討して、その抗炎症作用を個体、組織レベルで評価する。また、マクロファージ細胞株(Raw264.7)において、ドネペジルが持つLPS誘発性炎症反応抑制効果について細胞、分子レベルで更なる検討を行い、ドネペジルの作用機序について分子レベルで明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究進捗状況が遅れていることもあり、補助事業期間の延長を行い、研究経費の残額を次年度に繰り越した。次年度は、ドネペジルの抗炎症作用を評価するための疾患モデルマウス作成のための動物購入費、モデル作成のための小動物用手術器具類の購入費、および各種炎症関連因子に対する抗体の購入費としての使用を計画している。
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