研究課題/領域番号 |
23790860
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
新井 しのぶ 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤研究員 (30529970)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | apoE / 心筋症 / 抗酸化作用 / 心不全 |
研究概要 |
心筋症の発症メカニズムを、心筋細胞レベルで明らかにすることは、心不全の根本的治療への応用が期待される。我々は、心筋症患者の心筋組織における遺伝子発現変動をDNAマイクロアレイにより網羅的に解析し、apoEが心筋症の重症度に非常に相関することを突き止めた。apoEの機能は、コレステロールや脂肪運搬、さらに細胞内抗酸化作用にいたるまで、詳細に研究されている。本研究では、『心筋細胞での酸化ストレス』をapoEが制御することで、心筋症を引き起こすきっかけになっているという仮説を立て、まずapoEの抗酸化作用に影響を及ぼす遺伝型解析を行った。遺伝子発現解析を行った心筋症患者ゲノムを対象とし、ゲノム解析のパイロット実験を行ったところ、心筋症の重症度とapoEの遺伝型には相関が見られなかった。(なお、本年度までに行えたゲノム解析では、検体数が少なく、apoEの遺伝解析の検定が正確でない可能性もあるため、来年度もゲノム解析を引き続き行う。)この結果、心筋細胞における抗酸化作用にapoEが直接関与していない可能性が示唆され、apoE単独でなく他の因子も視野に入れた細胞内動態の解析が必要となってきた。そこで、DNAマイクロアレイを再解析した。その結果、機能未知であるデヒドロゲナーゼ酵素が、心筋症重症度に相関していること、また細胞内局在および心筋組織での特異的発現から、apoEと同様に心筋細胞の恒常性に関与している可能性が示唆された。現在、この機能未知タンパクだけでなく、他の重症度と相関する因子についても心筋細胞での機能との関係を追跡している。心筋症の重症化を伴う、細胞内分子機構は、その詳細が明らかになっていないことから、DNAマイクロアレイの結果によって明らかとなった、重症度と相関する遺伝子を、一分子でなく多角的に解析していくことは、細胞内分子機構全体を捉える上で非常に意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
apoEのゲノム解析がパイロット実験として終了した。また、ゲノム解析を検体数が少ないうちにパイロット実験として行ったことで、当初設定していた仮説が立証されない点が早期に推測され、現在新たに仮説を建て直すことができた。それらの結果を踏まえた上でも、現在順調に研究を進めれている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題において、心筋症の重症化がapoE単独で引き起こされているという仮説は、少数検体による遺伝型解析のパイロット実験により、立証されない可能性が生じた。そこで、DNAマイクロアレイデータを見直し、重症度と相関した遺伝子の全てにおいても、(なお、特に重症度との相関が高かった酸化還元反応に関与すると推測される機能未知蛋白質に関しては、重点的に研究を行っている)心筋細胞での細胞動態の解明も並行して行うことした。以上、今後apoE単独でなく心筋細胞異常により引き起こされる心筋症の発症分子機構を、多角的に解析する対応策のもと、現在研究を進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:600,000円(試薬、実験用にプラスティック製品等)旅 費:200,000円(成果発表のため)その他:100,000円(動物飼育管理費等)
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