研究概要 |
日本人の死因のなかで、心疾患はガンに続き2位と大きな割合を占め、中でも心不全はあらゆる心疾患の終末像として極め予後不良である。その重症度の違いは著しく、その重症化に至る因子は未だに解明されていない。心筋症に対して、遺伝子改変動物を用いた研究は急速な進展をもたらし、様々な遺伝子改変による心不全モデル動物も存在するが、実際の臨床で一次的なそれらの個々の遺伝子異常の関与が高くないことも良く知られた事実である。我々は心筋症の新たな重症化因子の特定を目指し、心不全患者の心筋組織内の網羅的遺伝子発現解析を行った。過去の研究と比較し、本研究では重症度と遺伝子発現の相関関係をより詳細に解析するために、心機能マーカーBNPが11-8091 pg/ml、左室駆出率が12-79%と、重症度の異なる多様な心疾患患者36名を対象とした。その結果、左室駆出率の低下、左室の拡大とともに発現が有意に亢進する遺伝子(p<0.01, ratio > 1.8)は17 genesあり、BNPや心筋線維化に関与するCTGFをはじめ、既知の遺伝子が含まれていた。それに対し、発現が有意に減少する遺伝子(p <0.01, ratio < -1.8)は13 genesで、心不全との関連が報告されている遺伝子を認めなかった。一方で、これらの遺伝子の中には、その発現の程度が極めて左室駆出率と良好な相関関係を示すものを含んでいた。これらの結果より、心不全モデルマウスであるtroponin T mutant mouseおよびC2C12細胞を用いた、より詳細な解析を行った
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