研究課題/領域番号 |
23790863
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 覚 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30420607)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ナノテク / DDS / 低侵襲医療 |
研究概要 |
薬剤封入ナノ粒子の製剤化と最適化(培養細胞を用いたスクリーニング)治療因子として血管保護作用、血管内皮細胞保護作用を有するスタチンを選択した。スタチンを封入した生体吸収性PLGAナノ粒子をエマルジョンソルベント法により作製し、スクリーニングすることにより最適なナノ粒子製剤を探索研究した。具体的には異なる処方で作製したナノ粒子の平滑筋増殖抑制、内皮細胞再生促進効果を培養細胞レベルで検証した。ナノ粒子は短時間内に高率に導入され、細胞質内に安定して長期間(7日間以上)停留すること、ナノ粒子製剤化していない薬剤と比較し細胞内DDSにより長期間に渡り有効性が持続することをすでに明らかにしている。脈波衝撃投与DDSカテーテルシステムとナノDDS融合によるブタ冠動脈バルーン傷害後新生内膜形成モデルでの治療効果の解析:耐圧性に優れたパルス発生装置の開発は完了している。疾患モデルとしてブタ冠動脈傷害モデルおよびブタ冠動脈ステント狭窄モデルを用いた。治験薬GMPグレードのスタチン封入ナノ粒子製剤を脈波衝撃投与DDSカテーテルシステムを用いてバルーン傷害直後に投与し、28日後に病理学的に評価を行ったところ溶媒対象群と比べ、有意に新生内膜形成が用量依存的に抑制された。さらに、シロリムス溶出ステントおよびベアメタルステント留置後にスタチン封入ナノ粒子製剤を脈波衝撃投与DDSカテーテルシステムを用いて投与したところ、シロリムス溶出ステントにおいて見られるadverse effectsの低減が期待される病理組織像がスタチン封入ナノ粒子製剤群において観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定においては薬剤を塗布していないベアメタルステントモデルに対するスタチン封入ナノ粒子製剤のステント内再狭窄の抑制効果を検証するのみの計画であったが、ブタ冠動脈に対するステント留置手技の向上から、シロリムス溶出ステントの留置および薬理薬効試験の実施まで本試験計画を加速した。さらに、本研究を実施している医学部附属動物実験施設には256列 MDCT (Brilliance iCT、フィリップス社製)、高性能画像処理システムを供えた血管造影装置(Allura Xper FD10/10、フィリップス社製)、高精細超音波検査機器(Vevo2100、VisualSonic 社製)、大動物用外科手術システムなど、最先端の再生医療、医薬品・医療機器の開発・実用化を促進する先端医療開発特区(スーパー特区)として整備されている。これらの医療機器を用いたことによって、イメージング装置による経時的な病理病態の変化を追跡することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
脈波衝撃投与DDSカテーテルシステムによるブタ冠動脈ステント内狭窄モデルにおける治療効果の解析:DESの副作用(遅発性血栓)が明らかになって以来、通常のベアメタルステントの使用頻度が再び増加している。既に知られているとおり、通常のベアメタルステントでは約30%の頻度で再狭窄が生じる。その問題解決のために、本システムを用いた治療が適切と考えた。ブタ冠動脈に既報の方法を用いてバルーン拡張型マルチリンクステント(径3.0 mm, 長20 mm)を留置し、直後に本システムを用いて治療因子封入ナノ粒子をステント留置部位に投与する。4週間後の狭窄形成抑制効果を定量的血管造影、256列MDCTおよび病理学的手法を用いて解析する。有効性の機序解析は免疫組織化学的・分子生物学的手法により行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:800,000円旅費:300,000円謝金:0円その他:100,000円
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