①血管内皮機能は心疾患患者の予後予測因子として注目されているが、血管内皮機能に介入する治療法は確立していない。我々は、ヒト冠動脈内皮細胞を賦活化させる薬剤のスクリーニングの結果、テルミサルタンが血管内皮細胞を活性化することを確認した。血管内皮細胞の賦活化現象としては、テルミサルタンがミトコンドリア機能を変化させ、細胞内NADH+レベルを上昇させた。テルミサルタンは、ヒト冠動脈内皮細胞において、H2O2ストレス負荷に対するapoptosis/necrosisの減少、angiogenesisの増強、Senescence associated β Galactosidase活性によって評価される細胞老化の抑制、など血管内皮機能の改善効果を有することが明らかとなった。 ②血管内皮細胞の賦活化とミトコンドリア機能の変化との関連・機序を検討した結果、テルミサルタンは培養ヒト冠動脈内皮細胞のAMPKを上方制御してミトコンドリア機能を増強している知見が得られた。また、冠動脈内皮細胞における、テルミサルタンによる細胞内NADH+レベルの上昇や細胞老化の抑制などの効果に関しては、AMPKの薬理学的/遺伝子的な阻害により打ち消されることが明らかとなり、テルミサルタンはAMPKシグナリングを介して血管内皮機能を改善させることが示唆された。 ③in vivoでの血管内皮機能について、メタボリックシンドロームモデルであるKKAyマウスの大動脈を用いて検証を行った。内皮依存性の血管弛緩反応で評価した血管内皮機能は、標準食群に比較して高脂肪食群で有意に増悪したが、高脂肪食+テルミサルタン投与群では高脂肪食単独群に比較して有意に内皮機能が改善していた。このテルミサルタン投与による血管内皮機能改善の機序に関して、マウスの大動脈から抽出したタンパクを用いて、現在eNOS/AMPKなどの活性化について検討中である。
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