研究課題
本研究は、Phosphodiesterase 3A (PDE3A)が持つ心保護作用をin vivoのモデルを用いて検討した。マウスにアンジオテンシンII持続負荷を行ったところ、野生型マウスにおいては、心肥大および心筋線維化の発生を認めたが、心臓特異的PDE3A過剰発現マウスにおいては、心肥大および心筋線維化ともに野生型マウスと比較し抑制されていることが確認された。アンジオテンシンII刺激では、一般的にTGFbの活性が上昇することが知られているが、PDE3A過剰発現マウスにおいては、心臓におけるTGFbの発現が低下していることが確認され、アンジオテンシンII負荷後に野生型マウスではTGFbの発現が上昇したが、PDE3A過剰発現マウスでは、TGFb発現上昇は認めなかった。このため、TGFbの発現抑制が心肥大、心筋線維化を抑制している機序の一つと考えられた。今後はsmad, TAK1等、TGFbの下流に位置すると考えられる分子の活性を検討して行く予定である。不全心筋においては、PDE3の発現は低下しており、そのため更なるcAMPの上昇から心筋細胞死が誘発され、心機能がスパイラルに低下していく機序が報告されている。今回の結果は、PDE3Aの発現を維持することが、心ストレス下においても心筋リモデリングを抑制し、心不全患者の予後を改善させるという新たな治療戦略の基礎研究になるものと考えられた。また、血小板から可溶性Amyloid precursor protein 770 (sAPP770)が分泌されることが知られており、血小板機能にはPDE3Aが関与している。我々はラット心筋梗塞モデルでsAPP770が上昇することを確認した。今後血小板機能と合わせ、PDE3AとsAPP770の関連も検討していく予定である。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 287 ページ: 40817-40825
10.1074/jbc.M112.398578