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2011 年度 実施状況報告書

心筋梗塞後創傷治癒過程における骨髄由来樹状細胞の役割

研究課題

研究課題/領域番号 23790875
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

安西 淳  慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50528164)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード基礎研究
研究概要

我々は、心筋梗塞後治癒過程における骨髄由来樹状細胞(DC)の役割を明らかにするために、DCの特異的マーカーCD11cのプロモーター下流にサルのジフテリア毒素受容体とGFPを組み込んだ遺伝子改変マウスの骨髄を、放射線照射した野生型マウスに移植する骨髄移植モデルを作成し、ジフテリア毒素(DT)を投与することで、骨髄由来のDCを選択的に排除した。DCの浸潤を免疫染色にて確認すると、正常心臓にはほとんど認めないGFP+ DCが、心筋梗塞後7日目をピークに梗塞部に浸潤していた。一方、DTを投与すると心臓に浸潤するDCがほぼ完全に除去され、DCは心筋梗塞後に骨髄より動員されることが示された。DTを投与しDCを一週間除去したDC ablation群では、梗塞後28日目の左室拡張末期径の拡大、収縮能の低下がより顕著に認められた。梗塞部における炎症性サイトカインの発現、MMP-9の活性を時系列で観察すると、対照群では3日目をピークとして、その後徐々に低下するのに対し、DC-ablation群では7日目においても高値が持続していた。一方、抗炎症性サイトカインIL-10の発現、血管新生の程度については、DC ablation群で有意に抑制されていた。梗塞後7日目における単球/マクロファージの浸潤がDC-ablation群で有意に亢進しており、その中でも特に炎症性Ly6Chigh単球、及びF4/80+ CD206- M1マクロファージの浸潤が対照群と比べて有意に多く、抗炎症性Ly6Clow単球、F4/80+ CD206+ M2マクロファージの浸潤は有意に低下していることが明らかとなった。梗塞後心不全における樹状細胞の役割について詳細に解析した論文はこれまで無く、本研究の結果は意義深いものと考え、Circulation誌に報告した(Circulation 2012;125:1234-45)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

報告した論文は研究結果の一部をまとめたものであるが、交付申請書に記載した実験計画のうち、野生型(WT)、及びIL-10ノックアウト(IL-10KO)マウスから採取した骨髄由来樹状細胞(BMDC)のadoptive transferの実験ではある程度の結果が得られている。梗塞部よりcollagenase、elastase、DNAseを用いて炎症細胞を単離・精製し、細胞内サイトカイン染色を行いFACSにて解析すると、CD11c+ DCが主なIL-10産生細胞の一つであることが示唆された。その後、WTマウスの大腿骨、下腿骨から骨髄細胞を抽出し、10ng/mlのGM-CSFを加えたRPMI medium にて6日間培養後、AutoMACSでCD11c陽性のBMDCを採取し、樹状細胞(DC)を除去した群に心筋梗塞を作成後、5×106個のWT-BMDCを経静脈的に投与したところ、DC ablationによる心機能の悪化、Ly6Chigh 単球の浸潤の亢進、MMP-9の活性化がほぼキャンセルされた。一方で、IL-10KOマウスから採取したBMDCをadoptive transferしても、WT-BMDCの投与で見られたような効果はほぼ認めなかった。今後詳細な検討を繰り返し加える必要があるが、交付申請書に記載した平成23年度の研究目的について、ある程度成果が得られていると考えている。H24年度の研究目的(WTマウスへのWT-BMDCのtransfer)を達成するために行う実験についても現在データを集めている段階である。

今後の研究の推進方策

これまで明らかになった結果の一部を論文として海外の学術雑誌に報告したが、樹状細胞(DC)がどのように炎症性、抗炎症性の単球・マクロファージを制御しているのか、その機序は明らかではない。今回注目したIL-10がそのkey moleculeとなっているのかさらなる検討が必要である。最近、マウス腸管に、IL-10を強力に発現してT細胞の活性化を制御する、CD11c+ CD11b+ MHCII+ の細胞が存在することが報告された(PNAS 2012;109:5010-5)。マーカーとしての表現型は我々が心臓で同定した樹状細胞と近似しており、心臓における樹状細胞がその他どのようなマーカー、サイトカインを発現して、さらにはT細胞をどのように制御するのかも検討する必要があると考えられる。

次年度の研究費の使用計画

未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。次年度の研究費については消耗品の購入が中心であり、その他旅費、論文印刷費などに充てる予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Regulatory Role of Dendritic Cells in Postinfarction Healing and Left Ventricular Remodeling2012

    • 著者名/発表者名
      Anzai A, Anzai T, Nagai S, Maekawa Y, Naito K, Kaneko H, Sugano Y, Takahashi T, Abe H, Mochizuki S, Sano M, Yoshikawa T, Okada Y, Koyasu S, Ogawa S, Fukuda K
    • 雑誌名

      Circulation

      巻: 125 ページ: 1234-45

    • DOI

      10.1161/CIRCULATIONAHA.111.052126

    • 査読あり
  • [学会発表] Selective Depletion of Dendritic Cells Resulted in Deteriorated Left Ventricular Remodeling after Myocardial Infarction2011

    • 著者名/発表者名
      Anzai A, Anzai T, Nagai S, Maekawa Y, Kaneko H, Sugano Y, Takahashi T, Sano M, Yoshikawa T, Koyasu S, Ogawa S, Fukuda K
    • 学会等名
      第75回日本循環器学会学術総会
    • 発表場所
      神奈川県横浜市パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011年8月4日
  • [学会発表] Dendritic Cell is an Immnoprotective Regulator in Post-Infarction Healing and Left Ventricular Remodeling2011

    • 著者名/発表者名
      Anzai A, Anzai T, Nagai S, Maekawa Y, Sugano Y, Sano M, Koyasu S, Fukuda K
    • 学会等名
      Scientific Sessions 2011 of American Heart Association
    • 発表場所
      オーランド(米国)
    • 年月日
      2011年11月15日

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公開日: 2013-07-10  

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