我々は、樹状細胞(DC)が心筋梗塞後7日目をピークに骨髄から梗塞部に動員されることを世界で初めて確認した上で、心筋梗塞後治癒過程におけるDCの役割を明らかにするために、DCの特異的マーカーCD11cのプロモーター下流にサルのジフテリア毒素受容体とGFPを組み込んだ遺伝子改変マウスの骨髄を、放射線照射した野生型マウスに骨髄移植し、ジフテリア毒素(DT)を投与することで骨髄由来のDCを選択的に排除できるモデルを作製した。その結果、DCを除去すると、炎症性単球・マクロファージの浸潤が亢進し、逆に抗炎症性単球・マクロファージの浸潤は抑制され、炎症性・抗炎症性反応のバランスが崩れることで、著明な心不全を引き起こすことを報告した(Circulation 2012;125:1234-45)。 最終年度では、梗塞部より炎症細胞を単離・精製し、CD11c+ DCが主なIL-10産生細胞の一つであることを確認した上で、野生型(WT)、及びIL-10ノックアウト(IL-10KO)マウスから採取した骨髄由来樹状細胞(BMDC)のadoptive transferにつき、検討した。WTマウスの大腿骨、下腿骨から骨髄細胞を抽出し、10ng/mlのGM-CSFを加えたRPMI medium にて6日間培養後、AutoMACSでCD11c陽性のBMDCを採取し、DCを除去したマウスに心筋梗塞を作成後、5×106個のWT-BMDCを経静脈的に投与した。その結果、DC除去による心機能の悪化、炎症性Ly6Chigh 単球の浸潤の亢進、MMP-9の活性化がほぼキャンセルされた。一方で、IL-10KOマウスから採取したBMDCをadoptive transferしても、WT-BMDCの投与で見られたような効果はほぼ認めなかった。今後、より詳細な検討を加え、学術雑誌に投稿する予定である。
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