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2012 年度 実施状況報告書

骨髄由来細胞動員による動脈硬化進展と組織再生機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23790878
研究機関順天堂大学

研究代表者

佐藤 弥生  順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (20327810)

キーワード動脈硬化 / 骨髄幹細胞 / MMPs
研究概要

閉塞性動脈硬化症(ASO)では、動脈硬化の進展と血管閉塞に伴う循環障害、虚血性壊死巣の形成が主病態となる。私達以前、壊死組織の再生が、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の活性化に伴って組織中に動員された骨髄由来の各種炎症性細胞による血管新生因子の供給によって促進されることを明らかにした。一方炎症性細胞の異常集簇は、動脈硬化性プラークの形成を促進する。生体内で進行する動脈硬化性疾患の病態を骨髄由来細胞動態の視点から考えると、骨髄由来の炎症性細胞群が末梢組織中へと動員、そして病変内に集簇することによるプラーク形成の進行相ーいわば骨髄由来細胞動員が病態悪化に関与する時期と、さらに動脈硬化形成が進んだ結果生じる末梢の虚血性循環障害、壊死性病変に対し、骨髄由来細胞が動員され、組織修復が促進される再生相ーいわば骨髄由来細胞動員が病態改善に関与する二相から構成されていること、そして細胞動員の起点は線溶系及びMMPの活性化にあると考えられた。本研究は、この二相の過程について、大きく二つの実験に分けて証明を試みるものである。
動脈硬化の進展に伴うプラークの形成過程においては、リンパ球、単球・マクロファージ、マスト細胞を含む骨髄由来の炎症性細胞の血管内皮傷害部位への動員、集簇が、重要なプロセスであることが判明している。これまでの研究で骨髄由来細胞の動員ではMMP線溶系因子を含む各種のプロテアーゼの活性化が起点となっていることが判明している。以上のことから、昨年度までの研究では、動脈硬化症のマウスモデルを使用し、各種の免疫抑制剤による循環血液中の炎症性細胞の量的減少、活性障害や各種プロテアーゼ活性阻害剤による細胞動員の阻害が、動脈硬化性プラーク形成に与える影響についての精査を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

昨年度までの研究では、骨髄由来の炎症性細胞群の末梢組織中へと動員抑制目的のため、動脈硬化モデルであるApoE遺伝子欠損マウスに高脂肪食を負荷後、免疫抑制剤(Cy)投与群、および対象群を作製した。大動脈組織を病理学的に観察したところ、Cy投与群では有意差を持って動脈硬化の形成が抑制されていることが判明した。プラーク内の動員細胞の種類と細胞数を組織染色にて確認したところ、マクロファージおよびT細胞、線維組織のいずれもCy投与群では減少していた。大動脈弓部のプロテアーゼ活性を測定したところ、炎症性のマトリックスメタロプロテイナーゼであるMMP-2およびMMP-9のいずれもが、Cy投与群では減少を認めた。以上のことより、この研究の目的である骨髄由来の炎症細胞の動員抑制が動脈硬化形成に重要な役割をしていることは明らかとなったが、プロテアーゼの抑制によるマクロファージ分画やT細胞分画への作用については、まだ検討が必要である。また、動脈硬化症のモデルマウスへの免疫抑制剤の投与は行えたが、マウスの繁殖不良も重なり、当初予定していたプロテアーゼ活性阻害剤の投与までは行うことができなかったことで、研究の遅れを生じてしまったと考える。

今後の研究の推進方策

昨年度までの研究では、動脈硬化症のモデルマウスへの免疫抑制剤の投与による骨髄由来の炎症細胞の動員抑制の過程の証明までは行えた。しかし、マウスの繁殖不良なども重なり、プロテアーゼ活性阻害剤の投与によるまでには至らなかった。本年度は、プロテアーゼ活性阻害剤であるプラスミン阻害剤の投与により、プロテアーゼ活性阻害剤による細胞動員の阻害が、動脈硬化性プラーク形成に与える影響についての研究から開始する。一方、虚血性壊死組織の再生過程における、各種プロテアーゼ活性化を伴った骨髄由来細胞の動員を証明するため、前者の研究と並行して、大腿虚血肢モデルに対し各種プロテアーゼの活性化因子及びこれを誘導する薬剤の使用による虚血壊死組織の再生への影響を精査する。具体的には、MMP-9および線溶系遺伝子欠損マウスとその野生型マウスに、大腿動脈結紮による下肢虚血モデルを作製し、線溶系プラスミン活性化因子とその阻害剤投与群で末梢血の動員細胞の種類と細胞数の比較検討していく。

次年度の研究費の使用計画

動物実験を主体とした実験のため、マウスの購入費用、高脂肪食費用、飼育維持費が必要である。消耗費として、フローサイトメトリー(FACs)解析のための細胞表面抗体費用、各種サイトカイン測定のためのELISAおよびreal time PCRのための諸経費、免疫染色のための抗体の費用などが必要になる。また、各種実験消耗品にも費用が必要となると考える。
さらに、病理組織作製の謝礼、データー保存、データー解析に必要な画像解析ソフトウェアおよび国内外の学会での研究発表のための渡航費が必要になると考えている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Inhibition of PAI-1 induces neutrophil-driven neoangiogenesis and promotes tissue regeneration via production of angiocrine factors in mice2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshihiko Tahiro
    • 雑誌名

      Blood

      巻: 119 ページ: 6382-6393

    • DOI

      10.1182/blood-2011-12-399659

    • 査読あり

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公開日: 2014-07-24  

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