研究概要 |
【背景と目的】昨年度はイヌ心臓を標的とする重粒子線照射を行い、心室遅延電位(LP: FilteredQRS, LAS40, RMS40)の経時的観察を行うとともに、THIRが慢性期の梗塞瘢痕に伴う不整脈基質に及ぼす効果を検討した。その結果、重粒子線照射後の心室内遅延電位の改善と、電気生理学検査を用いた心室性不整脈の誘発性が低下することを証明した。今年度は同様のモデルを用いて、左室心筋のギャップジャンクション結合タンパクであるコネキシン発現様式と心機能の関係を観察した。 【方法】ビーグル犬(n=8)を用いて経皮的カテーテルによるマイクロスフェアー注入法で心筋梗塞(MI)を作成し、2週間後THIR を施行した。継続的に心エコーを用いた心機能計測を行い、照射1年後にサクリファイスを行いコネキシン43(Cx43)染色を行った。 【結果】照射心筋におけるCx43染色は梗塞部位で12~39%, 非梗塞部位で41~66%増加した。心機能評価における駆出率は梗塞作成2週間後に10%減少したが、1カ月後には12%の改善を認め、その後1年間心機能は維持された. 【結論】心臓を標的とする重粒子線照が梗塞後のCx43増加を介して、左室における電気的調和と左室収縮のうの改善に関与する可能性が示唆された。
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