研究課題
重症心疾患の病態生理の根幹をなすものは心臓エネルギー、特に糖代謝制御異常であると言える。一方、不全心において、アルドステロンはNaなどの電解質制御を含め、その病態形成の過程で中心的な役割を担っている。本研究では糖代謝と電解質制御の双方の架け橋となりうるアルドステロンに注目し、病的心筋における発現及び作用機構を検討した。アルドステロンの心筋細胞に対する直接的な作用について仔ラット培養心筋細胞を用い、糖代謝制御の中心的なシステムの1つであるインスリンシグナルとの相互関係を解析した。アルドステロンは高糖濃度環境下において長期的にはミネラロコルチコイド受容体(MR)依存性に持続的なAkt活性を引き起こし悪影響を及ぼす一方で、短期的には逆にMR非依存性にNa-H+交換体(NHE)-PI3K経由でAktを短期活性化することで細胞保護的に働く可能性を示した。実際、過酸化水素による細胞障害モデルではアルドステロンの短時間刺激はインスリンと同程度に時間依存性に細胞障害を緩和することが示され、MR受容体拮抗薬のエプレレノンは有意な影響を及ぼさないことが分かった。これに一致して、ラット心によるLangendorff虚血再還流モデルを用い、アルドステロン短時間刺激の虚血再還流障害に及ぼす影響について検討したところ、アルドステロンはベースラインでの心機能には有意な影響を及ぼさなかったものの、虚血再還流後の左室内圧回復率を有意に改善させることが分かった。共に心不全において活性化されるレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系と糖代謝は、危機的な状態にある心臓に対するいわば生体の防御反応的機構とも言える。その架け橋としてのアルドステロンはNaを中心としたvolume調節ホルモンとしてだけでなく、病的な状況下においては糖代謝制御に対しても深い関わりがある可能性が示唆された。
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