研究課題
糖尿病は、長期にわたる高血糖や種々の代謝異常により、全身の臓器に合併症を引き起こす疾患である。高血糖がもたらす合併症の発症・進展機序には、ポリオール代謝の亢進、酸化ストレスの亢進、protein kinase Cの活性化などが注目されている。糖尿病ではアポトーシスは血管障害の成因や合併症の発症に関与し、特に高血糖状態で血管内皮細胞のアポトーシスを誘導することが知られている。本研究室では、アポトーシスを促進する蛋白質naofenをクローニングしており、本研究では糖尿病血管障害でのアポトーシスの発生におけるnaofenの役割を調べる。平成23年度の成果を以下に記す。 合成したnaofenペプチド蛋白質(アミノ酸の配列:459-473)を用いて、ウサギに免疫し、抗naofen抗体を作成・精製した。ストレプトゾトシン誘発性糖尿病ラット腎臓組織において、抗naofen抗体を用いて免疫染色を実施し、腎血管内皮細胞のnaofen発現量を増加するという知見が得られた。In vitro では、高グルコース(30 mM)培養したラット大動脈内皮細胞において、naofen mRNAの発現量が増加したことから、糖尿病血管障害の発生はnaofenとの関与することが考えられる。また、高血糖による酸化ストレスの亢進がnaofenと関与するかどうかを確認するため、過酸化水素を培養細胞に投与したところ、naofenの発現は増加した。我々は、高グルコースによるnaofen発現の増加は、酸化ストレスに関与する可能性があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
1. 糖尿病血管障害の発生はnaofenに関与する可能性がある。2. 高グルコースによるnaofen発現の増加は、酸化ストレスに関与する可能性がある。
細胞内情報伝達系におけるnaofenの位置付けを検討し、糖尿病血管障害の病態発症・進展におけるnaofenの役割を解析する。
アポトーシス誘導系に関連するPI3K・MAPK経路の阻害剤を用いて、naofenの細胞内シグナル伝達経路を解明する。また、抗酸化剤などの治療薬による糖尿病血管内皮障害の改善とnaofenの発現の関連性を、炎症反応あるいはアポトーシスの発生に対する影響を基にして解析する。研究費の主要な用途は試薬などの消耗品である。
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Hepatology Research.
巻: 42(7) ページ: 696-705
DOI:10.1111/j.1872-034X.2012.00972.x
International Journal of Pharmacology
巻: in press ページ: -
巻: 7 ページ: 388-393
10.3923/ijp.2011.388.393