研究課題
糖尿病合併症の発症・進展機序には、ポリオール代謝の亢進、酸化ストレスの亢進、protein kinase Cの活性化などが注目されている。糖尿病ではアポトーシスは血管障害の成因や合併症の発症に関与している。本研究室では、アポトーシス関連蛋白質naofen(WDR35)をクローニングし、本研究では糖尿病血管障害でのアポトーシスの発生におけるnaofenの役割を調べた。(1)ストレプトゾトシン誘発性糖尿病ラット腎臓組織において、抗naofen抗体を用いて免疫染色を実施し、腎血管内皮細胞のnaofen発現量を増加するという知見が得られた。(2)高グルコース培養したラット大動脈内皮細胞において、naofen mRNAの発現量が増加したことから、糖尿病血管障害の発生はnaofenとの関与することが考えられる。(3)高血糖による酸化ストレスの亢進がnaofenと関与するかどうかを確認するため、過酸化水素を培養細胞に投与したところ、naofenの発現は増加した。抗酸化薬EUK-8およびp38 MAPK阻害薬SB202190の前投与は、過酸化水素によって誘導されたアポトーシスの発生を抑制したと同時に、naofen発現の増加を抑制した。以上の実験結果から、細胞内情報伝達系におけるnaofen の発現は、ROSを介するp38 MAPKシグナルの下流に存在することが確認された。(4)NF-κB阻害薬であるAPDCは、ROSによるNF-κBの活性化を抑制し、同時にnaofenの発現も抑制したことから、ROSによるnaofen発現増加には、NF-κB活性化が関与する可能性があると考えられる。本研究では、糖尿病血管障害の細胞内情報伝達系におけるnaofenの位置付けを検討することによって、血管障害の発生機序解明に近づき、糖尿病合併症の発症に対する治療薬の開発などに役立つものとなる。
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