研究課題/領域番号 |
23790887
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
外山 康之 久留米大学, 医学部, 助教 (40412506)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 血管内皮前駆細胞 / 低強度パルス超音波 / 血管新生 |
研究概要 |
機械的刺激の負荷が血管内皮細胞の機能調節に重要なシグナルとなっていることが近年解明されている。虚血組織への細胞移植による血管新生療法の効果は未だ十分とは言えないことから、本研究では、移植前の血管内皮前駆細胞へ低強度パルス型超音波(LIPUS)による機械的刺激を負荷することにより、同細胞が有する血管新生能を増強させ、既存の臨床効果を上回るより効果的な血管新生療法の開発を試みた。 平成23年度は動脈硬化患者由来EPCを培養し、LIPUSを照射することで、培養EPCの細胞機能の増強がみられるかを確認した。結果、細胞遊走、EPC形成数の増加を認めた。さらに培養液中で血管新生作動物質であるAngiopietin-2の増加を認めた。 また、免疫不全マウス下肢虚血モデルを用いた血管新生能力評価を行った。下肢虚血作製1週間後(慢性下肢虚血モデル)にLIPUS照射または未照射のEPCを筋注投与した。14日後における虚血下肢内の血管新生をレーザードップラー法による血流評価および免疫学的組織染色法(CD31染色)による毛細血管密度評価にて行い、いずれもLIPUS照射群において有意な増強効果を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度の目標として(1)培養EPCの血管新生に関する細胞機能を細胞実験で評価し、(2)さらにLIPUS前照射がEPCを筋注した動物下肢虚血モデルにおいて血管新生能を増強するかを検討する予定としていた。 前述の如く、当該年度の研究にてLIPUS照射はEPCの細胞遊走、形成数および分泌能を有意に増強し、EPCを投与した虚血組織の血管新生も増強することが判明した。 以上のように当初の計画通りに順調に経過していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は主にLIPUS及ぼすEPCの血管新生関連細胞シグナルへの影響を検討し、LIPUSがEPCの血管新生能を増強するメカニズムを検討していく。 具体的には、ウエスタンブロットにより、細胞増殖や血管新生に関連する細胞内シグナル(MAPK/ERK、PI3K/Akt)のLIPUS照射による継時的な変化を評価する。また、活性化シグナルの抑制実験によりLIPUSによる細胞増殖効果、細胞機能増強効果の反応を評価検討する。また、成熟内皮細胞においてはLIPUSがeNOS活性増強効果を有することが示されており(J Thromb Haemost 2004)、LIPUSがEPCにおいてeNOSの活性化増強効果があるか否か、血管新生増強効果のメカニズムとなるかを評価検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には、これまでと同様にEPCの培養、培養EPCを用いた in vitro実験を行う予定であるため、それに関連したウエスタンブロットやNO測定キットの機材、各種抗体、試薬などの購入費を計上する。
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