研究課題/領域番号 |
23790888
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
尾崎 司 独立行政法人国立循環器病研究センター, 分子薬理部, 特任研究員 (60380565)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 循環器・高血圧 / 利尿ペプチド / 分泌誘導 / 膜タンパク質 |
研究概要 |
本研究は、心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) 分泌を誘導する新規活性ペプチドの産生制御機構とこのペプチドによるANP分泌誘導の作用機序を解明することを目標として、最終的にはこのペプチドの心臓での機能解明を目指して実施した。ANPは心臓で産生され、心筋や血管の弛緩効果をもたらし、心不全の治療薬として臨床応用されている。本研究のペプチドは膜タンパク質由来のペプチドだが、現在までに、膜タンパク質から切り出されたペプチドが循環器系で作用するという報告は全くない。 このペプチドの産生機構の解明を目指し、このペプチドの産生細胞であるラット心臓線維芽細胞を各種サイトカイン等で刺激し、このペプチドの親タンパク質である膜タンパク質の発現変動を定量PCRで測定した。同じくANP分泌誘導が報告されていたアンジオテンシンIIや炎症性サイトカインであるインターロイキン1βでは発現誘導は検出されなかった。一方、このペプチドによるANP分泌の作用機序を明らかにする目的で、既知の生理活性ペプチド、エンドセリンとこのペプチドの活性強度の比較を行った。このペプチドは100 nMまで有意にANP分泌誘導を行ったが、エンドセリンと比べて1桁活性は弱かった。一方、このペプチドによるANPの発現誘導を調べたところ、6 、12、24、48、72時間では無刺激と比べて有意な差は示さなかった。したがってこのペプチドによる作用はANPの発現は変化させず、分泌を促進させるものと考えられる。このペプチドのノックアウトマウスを作製し、野生型と心臓/体重比を比較したが、有意な差は検出されなかった。しかし、血中ANP量はノックアウトマウスでは野生型に比べて低値を示したことからこのペプチドはANP産生分泌に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では23年度は1)ANP分泌誘導活性をもつ新規機能性ペプチドの産生調節因子の探索 (ラット心臓線維芽細胞)、2)ANP分泌誘導活性について既知の生理活性ペプチドとの比較(ラット心筋初代培養細胞)、3)ANP分泌誘導機構の解明に向けた発現変動解析 (ラット心筋初代培養細胞)、4)ノックアウトマウスと野生型マウスの比較 (心肥大、心線維化について検討)の4項目を予定しており、1)を除き、計画通り実施できた。1)に関しては、ペプチドの測定系の感度に問題があったのでタンパク質の発現で代替した。また、24年度に計画していたノックアウトマウスに関する解析も一部行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度当初に施設転出により、研究を完了させる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度当初の研究完了に伴い、事業廃止承認申請を行った上で、未使用額に関しては返還する予定である。
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