研究課題
本研究では、遺伝子変異を含む様々な病態誘発因子が最終的に心筋症という表現型を引き起こす分子機構を、プロテオーム解析を用いて解明し、治療戦略へと応用することを目指した。まず初めに本研究で行う組織プロテオーム解析の再現性、網羅性、定量性を確保する目的で実験条件の最適化を行い、デオキシコール酸ナトリウム(SDC)とラウロイルサルコシン酸ナトリウム(SLS)の混合溶液中で心臓組織を細断、煮沸することで、タンパク質を効率よく網羅的に、かつ再現性良く回収する方法を確立した。また、1回の測定で5000以上のペプチド、1000以上のタンパク質を同定可能なLC-MS測定プラットフォームを確立し、HAMMOC(Hydroxy Acid-Modified Metal Oxide Chromatography) 法によるリン酸化濃縮法と組み合わせることで、1測定で1000程度のリン酸化ペプチドを同定することに成功した。これら手法を用いて、2種類の心筋症モデルマウスとその対照マウスから取得した心臓組織のプロテオーム解析とリン酸化プロテオーム解析を行い、定量比較を試みた。繰り返し測定を行うことで、全体として、約13000ペプチドから2400程度のタンパク質を、また約6000のリン酸化ペプチドから4000を超えるリン酸化サイトを同定することができた。さらに、同定したリン酸化ペプチドの質量電荷比とLCの保持時間情報を用いることで、同定できた全リン酸化ペプチドの定量を、全てのLC-MS測定データにおいて行った。心筋症モデルと対照間でリン酸化ペプチド量の比較解析を行った結果、約20%程度のリン酸化ぺプチドにおいて、2倍以上の変化が見られた。現在、これら変化の見られたリン酸化ペプチドとリン酸化サイト情報をもとに、病態を誘発しうるシグナル分子ネットワークの同定を行っている。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 3件)
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