Epidermal growth factor receptor GFR(上皮増殖因子受容体)変異陽性肺癌は、近年増加傾向にある非喫煙者に発生する肺腺癌の一つである。EGFR-TKI(チロシンリン酸化酵素阻害薬: ゲフィチニブ、エルロチニブ)というEGFR変異陽性肺癌に対する特異的治療法が第一選択となるエビデンスとなったことは一筋の光明ではあるが、症例を蓄積し判明したこととして、根治にいたった症例はほとんどなく、数ヶ月から数年後に耐性化し、肺や脳、骨に再発する例が多く、依然として長期予後は不良であり、発症機序の解明は重要である。 EGF変異による細胞への効果を解析するため、変異EGFR発現レトロウイルスベクターを作成し,内因性EGFR陰性細胞に導入した。赤白血病細胞K562は内因性にEGFRを発現しておらず、解析に有用であることを見いだした。K562はBcr-Abl融合遺伝子を発現し、oncogene addictionしている。そこで、ImatinibによるBcr-Abl特異的阻害条件下でのEGFR依存性細胞生存/増殖を調べたところ、EGFRシグナルに依存していることが明らかとなった。そこで、変異型EGFRを導入したK562細胞に対して、EGFR-TKIの効果を解析したことろ、同株はゲフィチニブ感受性を示した。一方、耐性変異T790M陽性細胞は、ゲフィチニブ耐性を示した。本研究により、EGFRを本来有しない細胞においてもEGFRシグナル伝達経路は存在し、外来の変異EGFRはそれを利用し、EGFRシグナル依存性を生むという結果が得られた。
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