前年度に引き続き、ピルフェニドンの標的分子を同定することを目的に、アフィニティー精製法を用いて、ピルフェニドン標的分子の同定を試みた。培養細胞であるRAW264.7細胞の細胞質画分と核画分を用いたアフィニティー精製で、ピルフェニドン誘導体―1、2、3(PD-1、PD-2、PD-3)それぞれにピルフェニドン結合タンパク質の候補が検出されたが、繰り返し実験において再現性を得ることができなかった。そこで細胞をかえて、上皮系培養細胞であるPC-9(ヒト肺癌由来)を用い、大量培養したのちに細胞溶解バッファーで、細胞質画分を得た。このタンパク質溶液を用いて、PD-1でアフィニティー精製を行い、SDS-PAGE法でタンパク質を分離し、銀染色で可視化したところ、約40kDのあたりにバンドが確認され、ピルフェニドン標的分子の候補が確認された。さらにフリーのピルフェニドンを用いた結合競合実験で、ピルフェニドン標的分子の候補と、PD-1との結合は阻害され、このピルフェニドン標的分子の候補は、真の標的分子である可能性が示唆された。このタンパク質同定のため質量分析を行ったが、タンパク質を十分に濃縮することができず、最終的に同定には至らなかった。その後PC-9の細胞質画分を用いて繰り返しアフィニティー精製を行ったが、標的分子の同定には至らなかった。TGF-βでA549細胞を刺激し、ピルフェニドンの線維化抑制効果を示した論文が発表されたため、TGF-βで刺激された上皮細胞に標的分子が存在すると仮定し、TGF-βで刺激されたA549細胞の細胞質画分を用いて、同様のアフィニティー精製を行った。PD-1、PD-2、PD-3それぞれで実験を行ったが、ピルフェニドンの標的分子の同定には至らなかった。
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