研究課題
平成23年度は、ヒト胎児肺線維芽細胞株であるMRC-5、HFL-1細胞を用いたin vitroの検討で、合成LXRアゴニストT0901317、生理的LXRアゴニスト22(R)-hydroxycholesterolがTGFβによる筋線維芽細胞への分化を抑制する事を示した。そこで平成24年度は、in vivoでの肺線維化病態におけるLXRの役割に関して検討を行った。まず、マウスブレオマイシン肺障害モデルを用いて、障害肺におけるLXRα、LXRβの発現をリアルタイムPCR法で検討した。その結果、LXR-αは、ブレオマイシン投与7日目をピークに発現の低下を認めた。一方、LXR-βは、炎症期、線維化期においてむしろ発現が増加した。次に、合成LXRアゴニストT0901317を腹腔投与し、ブレオマイシン肺障害に与える影響を検討した。T0901790の早期投与モデル(day-1~5)では、薬剤投与群において肺線維化の軽減を認めた。一方、後期投与モデル(Day14-20)においては、薬剤投与群とコントロール群において線維化に差異を認めず、むしろ薬剤投与群において強い傾向にあった。以上の結果は、従来報告されているように、LXRアゴニストの抗炎症作用を示唆する。一方で、抗線維化作用に関しては、線維芽細胞を用いたin vitroの検討と、マウスブレオマイシン肺障害モデルの検討では、相反する結果を得た。肺線維化には、線維芽細胞以外の多くの細胞が関与する事から、他の細胞においては、LXRアゴニストが線維化を促進する方向に働く可能性がある。LXRは、肺胞マクロファージ、II型肺胞上皮細胞に多く発現する事から、平成25年度は、他の細胞株を用いたin vitroの検討を行う予定である。
3: やや遅れている
今年度予定していた動物実験は、予想と異なる結果であるが、新たな展開につながる可能性を得た。ヒト疾患肺を用いた核内受容体の免疫組織学的検討は、適切な染色条件が確立せず、実際の検討までは至らなかった。以上の事から、進行が遅れてはいるがある程度の達成度を得た。
平成25年度は、平成24年度の動物実験の結果を受けて、肺胞マクロファージ、II型肺胞上皮細胞などの細胞に焦点をあてて、LXRの働きに関して検討を進める予定である。また、ヒト疾患肺を用いて、ヒトにおける核内受容体の役割に関して検討を進める
次年度使用額は、当初予定していたヒト疾患肺を用いた核内受容体の免疫組織学的検討を次年度に延期することにより生じたものであり、延期した免疫組織学的検討と当初予定していた実験に必要な経費として、平成25年度請求額とあわせて使用する予定である。
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Sarcoidosis Vasculitis and Diffuse Lung Diseases
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