研究課題/領域番号 |
23790899
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 朗 東京大学, 保健・健康推進本部, 助教 (90591412)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
前年度に引き続き、多能性幹細胞からの気道上皮細胞の分化誘導法の確立を目指し、培養条件の検討を行った。まずマウスES細胞株EB5を用いて実験を進めた。レトロウイルスによる遺伝子導入を試み、FACS解析により約30%の導入効率が得られたが、発現レベルは低かった。次に胚様体形成(hanging drop法あるいはペトリ皿上での浮遊培養 )あるいは平面培養によって分化を促し、さらにactivin刺激による内胚葉系細胞の誘導を試みた。さらに気道上皮用の培養条件も組み合わせた。過去の文献を参考にして、TGF-beta阻害剤(LY364947)・BMP阻害剤(dorsomorphin)・BMP4・FGF2刺激などを組み合わせて、培養条件の最適化を試みた。内胚葉系細胞および気道上皮細胞のマーカーとしてFOXA2およびTTF-1を指標としたが、コントロールとして用いたマウス気道上皮細胞MLE12と比較して、その発現レベルは低いレベルにとどまった。これらの結果より、将来的な応用を考えるとヒトiPS細胞を用いた実験にシフトする方が有望と判断した。まずはヒト皮膚線維芽細胞株NR1RGBからのiPS細胞の作出を試みた。addgeneよりiPS細胞誘導因子を組み込んだプラスミドを入手した(Oct3/4、L-Myc、Lin28、shp53、KLF4、SOX2)。エレクトロポレーションによる遺伝子導入の最適化を行い、形態的にiPSに類似した細胞コロニーの作出に成功した。さらにアルカリフォスファターゼ染色や、未分化マーカーの発現確認(SSEA4、TRA60、TRA81)、免疫不全マウスへの移植による奇形腫形成によって未分化性・多分化能を確認し、iPS細胞であると判断した。奇形腫の中に気道上皮と思われる繊毛上皮組織を確認した。現在はヒトiPS細胞からの気道上皮細胞の誘導を目指して条件検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスES細胞株を用いた実験を繰り返し、期待通りの結果を得られなかった。 ヒトiPS細胞の遺伝子導入の条件検討に多くの労力を必要とした。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトiPS細胞からの気道上皮細胞の分化誘導の条件検討を行う。 iPS細胞および、分化誘導をさせた細胞への遺伝子導入手法が確立されつつあり、気道上皮細胞のマスター転写因子であるTTF-1を発現させる方法を検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒトiPS細胞、よび分化細胞の細胞培養に必要となる細胞培養関連備品、培養液、増殖因子の購入に充てる。
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