当初はマウスの同種造血幹細胞移植を行い、閉塞性細気管支炎(BO)を作成する予定であった。しかしこのBOモデルは、同種造血幹細胞移植の手技が煩雑であること、BO発症が少ないことから、モデルとして用いることは難しいと判断した。そこで、我々が文献的検索を行ったところ、現在BOモデルとしては、異種マウス気管移植モデル(Heterotopic trachial transplantation: HTT)が最も多用されている(Am J Pathol 1993;142:1945-1951、Am J Transplant. 2009;9(9):1981-1987)。過去の文献をもとに、我々はHTTによるBOモデルの作成(ドナーBALB/c レシピエントB57BL/6)に成功した。 我々は、イマチニブを投与するin vivoの実験を行う前に、BOにc-Kitが関与しており、さらにレシピエント側のc-Kitが気道閉塞に関与すると仮説を立て、c-kitノックアウトマウス(WBB6F1-W/Wv)を用いてBOモデルを作成した。結果は、c-kitノックアウトマウスの気管をドナーとして移植した組み合わせで、有意に気道閉塞が抑制された。結果は当初の仮説と異なり、レシピエント側のc-Kitは気道閉塞には影響せず、ドナー側にc-Kitノックアウトマウスの気管を用いた場合に気道閉塞が抑制された。以上より、BOにc-Kitが関与していること、および移植気管側のc-KitがBO形成に関与していることが示唆された。
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