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2011 年度 実施状況報告書

Rasシグナル活性化変異を有する原発性肺癌を標的とした新規治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23790903
研究機関金沢大学

研究代表者

竹内 伸司  金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (90565384)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード肺癌 / Ras / 活性酸素
研究概要

非小細胞肺癌に対する分子標的薬として、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬が開発され、EGFR活性化型変異を有する症例において良好な治療成績が報告されている。しかし、肺腺癌において欧米で30-50%、本邦で10%前後の頻度で検出されているK-ras変異を有する肺癌に対しては、現状では有効な分子標的薬はない。Ras遺伝子に活性化変異が生じると、Ras蛋白は恒常的に活性化され、発癌や癌細胞の生存・増殖に寄与すると考えられている。一方、基礎的な検討でRasを活性化させた細胞は細胞内活性酸素(ROS)が上昇しやすく、酸化的ストレスによって細胞死をきたすことが報告されている。本研究ではRasシグナル活性化変異を有する肺癌に対して、ROS上昇により癌細胞特異的に細胞死を誘導する新規治療法の開発を目的として、これまでに以下の成果をあげた。1)K-ras変異を有する複数の非小細胞肺癌細胞株において、ROSを上昇させる薬剤によって細胞の生存率が低下することをMTT法で確認した。2)この抗腫瘍効果が活性化したRasシグナルに依存的であることを確認するために、siRNA法でK-rasの発現を抑制した状態でROSを上昇させる薬剤を加えたところ、抗腫瘍効果が減弱した。3)K-ras変異を有する肺癌細胞株を重度複合免疫不全(SCID)マウスの皮下へ移植し、ROSを上昇させる薬剤を投与したところ、10日間の経過で著明な腫瘍縮小効果を示した。また、マウス体重の減少はほとんどみられず忍容性にも優れていることが確認できた。以上の結果から、K-ras変異を有する肺癌細胞に対して、細胞内ROSレベルを上昇させる薬剤はin vitro、in vivoいずれにおいても抗腫瘍効果を示し、マウスに対する毒性も軽度であることが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

K-ras変異を有する肺癌細胞株対して、活性酸素を上昇させる薬剤によって、in vitro、in vivoにおいていずれも抗腫瘍効果がみられ、マウスにおける薬剤の忍容性も確認できたことから、現時点ではおおむね順調な研究の進捗が得られている。

今後の研究の推進方策

前年度に得られた知見をもとに、Rasシグナル活性化により細胞内活性酸素が上昇する機序を解析する。また、K-ras変異を有する他の肺癌細胞株においても、マウスモデルにおいて抗腫瘍効果が得られることを確認する。臨床検体を用いて、K-ras変異を有する肺癌腫瘍組織における酸化ストレスマーカー発現の有無について、免疫染色法などで検討する。

次年度の研究費の使用計画

臨床検体の収集、免疫染色に用いる抗体や動物実験のためのマウスと薬剤の購入など。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Hepatocyte growth factor induces resistance to anti-epidermal growth factor receptor antibody in lung cancer.2012

    • 著者名/発表者名
      Yamada T, et al..
    • 雑誌名

      J Thorac Oncol

      巻: 7 ページ: 272-280

    • 査読あり
  • [雑誌論文]2011

    • 著者名/発表者名
      Ogino H, Hanibuchi M, Kakiuchi S, Trung VT, Goto H, Ikuta K, Yamada T, Uehara H, Tsuruoka A, Uenaka T, Wang W, Li Q, Takeuchi S, Yano S, Nishioka Y, Sone S
    • 雑誌名

      Mol Cancer Ther

      巻: 10 ページ: 1218-28

    • DOI

      DOI:10.1158/1535-7163.MCT-10-0707

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Transient PI3K inhibition induces apoptosis and overcomes HGF-mediated resistance to EGFR-TKIs in EGFR mutant lung cancer.2011

    • 著者名/発表者名
      Donev IS, et al..
    • 雑誌名

      Clin Cancer Res

      巻: 17 ページ: 2260-2269

    • DOI

      10.1158/1078-0432.CCR-10-1993

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Genetically engineered humanized anti-ganglioside GM2 antibody against multiple organ metastasis produced by GM2-expressing small-cell lung cancer cells.2011

    • 著者名/発表者名
      Yamada T, et al..
    • 雑誌名

      Cancer Sci

      巻: 102 ページ: 2157-2163

    • DOI

      10.1111/j.1349-7006.2011.02093.x

    • 査読あり
  • [学会発表] Dual Inhibition of Met Kinase and Angiogenesis to Overcome HGF-induced EGFR-TKI Resistance in EGFR Mutant Lung Cancer2011

    • 著者名/発表者名
      竹内 伸司
    • 学会等名
      第70回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(愛知県)
    • 年月日
      2011年10月3日

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公開日: 2013-07-10  

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