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2011 年度 実施状況報告書

気管支喘息発作時における気道粘液過剰産生増悪メカニズムの解明とその抑制法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23790905
研究機関浜松医科大学

研究代表者

藤澤 朋幸  浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (20402357)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード粘液過剰産生 / 気管支喘息 / 気道上皮細胞 / MUC5AC / MUC5B
研究概要

気管支喘息発作時における粘液過剰産生機序の解明を目的とし、平成23年度には気道上皮におけるMUC5AC/MUC5B発現を相加的あるいは相乗的に誘導する共刺激の同定を試みた。Air liquid interface (ALI)にて培養したヒト気管上皮細胞へ,NF-κBを活性化する前炎症性サイトカイン(IL-1β, IL-17, TNF-α)やTLR ligands (LPS, LTA, poly I:C, fllagelin)とSTAT6を活性化するTh2サイトカイン(IL-4, 13)を,単独にあるいはそれらを組み合わせた共添加(IL-1β + IL-13, IL-17A + IL-4, TLR ligand + IL-13など)を行い,刺激因子添加におけるMUC5AC, MUC5B mRNA発現誘導をRT real-time PCRを用いて検討した。単独刺激においては,IL-1β, IL-17添加によりMUC5AC, MUC5Bが誘導されることを確認した。一方,STAT6活性因子であるIL-4, IL-13の24時間刺激において,ヒト気管上皮細胞におけるMUC5AC, MUC5B誘導は確認されなかった。共刺激に関しては,IL-1βまたはIL-17とL-4またはIL-13の24時間同時添加で,MUC5AC, MUC5Bの相加相乗誘導は確認されなかった。一方,IL-1βまたはIL-17とpoly I:Cの共刺激(IL-1β+poly I:C, IL-17+ poly I:C)において,相加的なMUC5AC誘導が確認された。現在,刺激因子の組み合わせや刺激のタイミング、タイムコースなどをより詳細に検討し、相加相乗的にMUC5AC, MUC5Bを誘導する刺激条件の同定を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

NF-κB活性化因子とSTAT6活性化因子の共刺激因子添加によるヒト気管上皮細胞におけるMUC5AC, MUC5B mRNA発現誘導を試みている。平成23年度の検討で,IL-1β, IL-17添加によりヒト気管上皮細胞におけるMUC5AC, MUC5B発現誘導が認められたが,IL-13, IL-4の24時間単独刺激はMUC5AC, MUC5B発現上昇を誘導しなかった。一方、いくつかの共刺激添加において相加的なMUC5AC誘導がみられため,今後刺激因子の組み合わせやタイムコースの検討,添加のタイミングなどさらに詳細な刺激条件に関して検討することを考えている。

今後の研究の推進方策

本年度は,相加相乗的なMUC5AC, MUC5B誘導を来す刺激条件を確認すべく,刺激因子の組み合わせやタイムコース,添加のタイミングなどに関して更なる検討を行う。併せて,共刺激により活性化されるシグナル伝達因子の解析を実施する。 我々が以前行ったマウス気管上皮細胞における知見では,IL-13によるMUC5AC誘導には48時間程度の長時間刺激が必要であり,ヒト気管上皮細胞に関しても同様の刺激が必要である可能性がある。 実際、臨床的には気管支喘息状態(高Th2サイトカイン状態)を基礎にして,気道感染により喘息発作・粘液過剰産生増悪が惹起されることから,ヒト気管上皮初代培養系においても,IL-13存在下にて培養の後NF-κB活性化因子で刺激しMUC5AC, MUC5Bの相加相乗発現誘導を来すか否か検討する必要があると考えている。上記の他,IL-17とTLR ligandsの共刺激など,更なる刺激方法の工夫を実施し、相乗的MUC5AC, MUC5B遺伝子誘導を来す刺激条件の同定を試みる。また,相加相乗誘導を来す細胞内シグナル伝達因子の検討として,STAT6リン酸化、MAPK(ERK, p-38 MAPK, JNK)のリン酸化、NF-κB(p50, p65)の活性化に関してwestern blotting法にて検討すると共に,各種インヒビターやsiRNAを用いていかなる経路阻害が共刺激誘導を効果的に抑制しうるか検討する。 併せて,上皮由来サイトカインとされ喘息病態に関与するTSLP, IL-25, IL-33の発現誘導に関して検討を加える予定である。

次年度の研究費の使用計画

引き続きヒト気管上皮細胞初代培養系を主体に研究を進めるため,正常ヒト気管上皮細胞,気管上皮細胞培地キットが必須であり、研究費より購入することを計画している。また,培養実験に用いる添加用試薬(サイトカイン、各種リガンド),MUC5AC, MUC5B発現誘導の確認のための遺伝子発現関連研究試薬(RNA抽出、RT、real-time PCR)については、本年度同様に購入する必要がある。 シグナル伝達経路の検討のためwestern blotting関連試薬が必要となり、あわせて抑制経路検討のために各種インヒビター,siRNAおよびsiRNA導入試薬が必要であり、研究費を用いて購入したいと考えている。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Impact of add-on pranlukast in stable asthma; the additive effect on peripheral airway inflammation2012

    • 著者名/発表者名
      Yasui H, Fujisawa T, Inui N, Kato M, Hashimoto D, Enomoto N, Nakamura Y, Shirai T, Suda T, Nakamura H, Chida K
    • 雑誌名

      Respir Med

      巻: 106 ページ: 508-514

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mouse Lung CD103+ and CD11bhigh dendritic cells preferentially induce distinct CD4+ T cell responses2012

    • 著者名/発表者名
      Furuhashi K, Suda T, Hasegawa H, Suzuki Y, Hashimoto D, Enomoto N, Fujisawa T, Nakamura Y, Inui N, Shibata K, Nakamura H, Chida K
    • 雑誌名

      Am J Respir Cell Mol Biol

      巻: 46 ページ: 165-172

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 外来市中肺炎治療における炎症性マーカーについて2012

    • 著者名/発表者名
      古橋一樹,藤澤朋幸,早川啓史,横村光司,豊嶋幹生,安田和雅,菅沼秀基,白井敏博,山田孝,増田昌文,千田金吾
    • 雑誌名

      日本呼吸器学会雑誌

      巻: 5 ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Serum activity of indoleamine 2,3-dioxygenase predicts prognosis of community-acquired pneumonia2011

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Y, Suda T, Yokomura K, Suzuki M, Fujie M, Furuhashi K, Hahimoto D, Enomto N, Fujisawa T, Nakamura Y, Inui N, Nakano Y, Nakamura H, Chida K
    • 雑誌名

      J Infect

      巻: 63 ページ: 215-222

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin-induced MUC5AC expression: aryl hydrocarbon receptor-independent/EGFR/ERK/p38-dependent SP1-based transcription.2011

    • 著者名/発表者名
      Lee YC, Oslund KL, Thai P,Velichko S, Fujisawa T, Duong T, Denison MS, Wu R
    • 雑誌名

      Am J Respir Cell Mol Biol

      巻: 45 ページ: 270-276

    • 査読あり
  • [雑誌論文] NF-κB mediates IL-1β- and IL-17A-induced MUC5B expression in airway epithelial cells2011

    • 著者名/発表者名
      Fujisawa T, Chang MM, Velichko S, Thai P, Hung LY, Huang F, Phuong N, Chen Y, Wu R
    • 雑誌名

      Am J Respir Cell Mol Biol

      巻: 45 ページ: 246-252

    • 査読あり
  • [学会発表] 透析室改修工事に際した環境感染対策2012

    • 著者名/発表者名
      藤澤朋幸, 澤木ゆかり, 名倉理教, 橋本大, 八木達也, 山田尚弘, 加藤明彦, 前川真人
    • 学会等名
      第27回 日本環境感染学会総会
    • 発表場所
      博多
    • 年月日
      2012.2.3
  • [学会発表] 気管支喘息患者におけるalveolar NO濃度に関わる因子の検討2011

    • 著者名/発表者名
      藤澤朋幸,橋本大,飯野和美,千田金吾,竹下明裕,前川真人
    • 学会等名
      第58回日本臨床検査医学会学術集会
    • 発表場所
      岡山
    • 年月日
      2011.11.19
  • [図書] 必携 内科検査・手技マニュアル ―この一冊ですべてがわかる-2011

    • 著者名/発表者名
      藤澤朋幸、林秀晴、千田金吾
    • 総ページ数
      393
    • 出版者
      南江堂
  • [図書] 膠原病に合併する間質性肺炎. 特発性間質性肺炎 -最近の進歩と展望-2011

    • 著者名/発表者名
      藤澤朋幸,榎本紀之、千田金吾
    • 総ページ数
      156
    • 出版者
      最新医学社

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公開日: 2013-07-10  

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