研究概要 |
昨年までの検討から、正常ヒト気管上皮初代培養細胞(Normal human bronchial epithelial cell: NHBE)においてサイトカインとTLR リガンドの共添加による相乗的なムチン遺伝子(MUC5AC, MUC5B)発現誘導は確認されなかった。そこで、本年度はNHBEにおける生体防御関連遺伝子の発現を主体に検討した。 IL-17Cは、上皮細胞を主たる産生細胞としIL-17RA/REヘテロダイマーを特異的受容体とする新しいIL-17サイトカインファミリー である。IL-17Cは腸管上皮に発現し、腸管感染防御に寄与すること報告されている。我々は気道上皮におけるIL-17C発現とその制御機構に着目し解析した。 種々のTLR リガンドのうちPolyI:C(TLR3リガンド)は、NHBEにおいてIL-17C発現をmRNAレベル、蛋白レベルで強力に誘導した。このIL-17C発現はTRIF阻害剤、IκB-αリン酸化阻害剤、NFκB p65-siRNAにより減弱し、IL-17C発現におけるTLR3/TRIF/NF-κB経路の関与が示された。一方、PolyI:CとIL-17Cの単独刺激は、human β-defensin (hBD) 2, colony-stimulating factor (CSF) 3, S100A12などの生体防御関連遺伝子発現を誘導し、IL-17Cは気道生体防御に関連することが示唆された。IL-17Cの特異的受容体であるIL-17REのノックダウンは、IL-17C発現に影響を与えずに、PolyI:CによるhBD2、CSF3、S100A12発現を減弱させた。 以上より、PolyI:Cにより誘導されたIL-17Cは、自己分泌的に気道上皮細胞に作用して生体防御関連遺伝子発現を増強し、気道生体防御に寄与していると考えられた。
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