研究課題/領域番号 |
23790908
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
松本 慎吾 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (10392341)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 肺癌 / 末梢循環血液 / 腫瘍細胞 / ゲノム異常細胞 / 抗がん剤感受性 |
研究概要 |
難治がんである肺がんの予後改善のためには、適切なバイオマーカーに基づいた個別化治療の開発が期待されているが、切除不能進行肺がんではバイオマーカー探索に用いる検体が質的、量的に不足するために、分子生物学的解析が制限される。末梢循環血液中を流れるがん細胞が検出できれば、より低侵襲で、かつ簡便にその解析が可能となるため、今回の研究を計画した。 今年度はまず、培養細胞を健常者血液で希釈して条件検討を行った。肺小細胞癌培養株N417を用いて、30ml血液中に1個~1000個の濃度で希釈し、抗EpiCAM抗体と磁気ビーズで処理して上皮細胞分画を選択した。抗CD45抗体を用いて白血球分画を除去し、その他の特異染色を用いてがん細胞を抽出したところ、30ml血液中10個の濃度のときにがん細胞が抽出できることが確認できた。現在、この抽出された細胞からゲノムDNAを抽出し、癌細胞内のゲノム異常が解析可能か検討中である。 また、将来的に末梢血がん細胞のゲノム異常に基づく分子標的治療の臨床試験の計画するために、肺小細胞癌に感受性のある分子標的治療薬を探索している。現在、IGF1-R阻害薬やAKT阻害薬を用いて、細胞増殖抑制効果を検討しているが、一部の治療薬で高感受性であることが確認できている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備実験として、健常人血液に肺がん培養細胞株を希釈して条件検討を行ったが、この際、血液からの培養細胞の検出に時間を要した。その理由の一つとして、陽性コントロールがないため、偽陰性の判断が難しかったことがあげられる。今後は、行った条件をもとに、研究内容を説明し、同意を得られた肺がん患者さんから血液を採取し、がん細胞を検出していく予定である。その場合、検出感度をあげるために適切な症例選択も一つの対策としてあげられる。
|
今後の研究の推進方策 |
1.肺がん患者における末梢循環血液中のがん細胞CTCと末梢循環血液中のゲノム異常細胞の検出:同意の得られた切除可能肺がん患者10人からそれぞれ末梢血を30ml採取する。そのうち7.5mlの血液、抗EpiCAM抗体と磁気ビーズで処理して上皮細胞分画を選択する。白血球分画のコンタミネーションを除去するために抗CD45抗体を用いる。また、その他の特異染色を用いてがん細胞を抽出する。得られたがん細胞の数をカウントし、-80度で保存する。血液の残り22.5mlからフィコール・ハイパーク密度遠心分離法を用いて単核球分画を選択採取する。得られた細胞分画より特異染色を用いてがん細胞と思われる細胞を抽出する。得られた細胞をカウントし、-80度で保存する。2.CTC、CACにおける遺伝子変異解析:上記で得られたCTC、CACからゲノムDNAを抽出し、遺伝子変異解析を行う。まず、抽出したゲノムDNAからAgilent社SureSelectを用いてゲノムキャプチャーを行い、目的の遺伝子DNA領域を濃縮する。得られたサンプルを次世代シークエンサー(イルミナMiSeq)でシークエンス解析を行う。3.CTC、CACからの遺伝子変異解析結果の検証:得られた遺伝子変異解析結果が妥当であるか、同一症例で肺がん原発巣組織での遺伝子変異が検索してあれば、その結果との比較を行い、検討する。 なお、上記CTCやCACから得られるゲノムDNAが極端に少ない場合には、肺がん患者血液から直接ゲノムDNAを抽出することも検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の未使用額1,181,103万円あり、これを今年度に繰り越すことにした。その理由は、前述の通り予備実験に時間を要したため、予定された研究費より少ない使用額となったためである。平成24年度、使用する研究費内訳は、主なもので、DNA抽出キットに20万円、SureSelectカスタムキットに合計で100万円、シークエンス試薬に合計で50万円、その他の物品費に合計で50万円、旅費に38万円を予定しており、合計で258万円を見込んでいる。従って、平成24年度の請求額は140万円を予定している。
|