研究概要 |
難治がんである肺がんの予後改善のためには、適切なバイオマーカーに基づいた個別化治療の開発が期待されているが、切除不能進行肺がんではバイオマーカー探索に用いる検体が質的、量的に不足するために、分子生物学的解析が制限される。末梢循環血液中を流れるがん細胞やがん由来のDNAが検出できれば、より低侵襲で、かつ簡便にその解析が可能となる。 前年度の結果より、末梢循環血液中の肺がん細胞から抽出できるゲノムDNAや、末梢循環血液中の肺がん由来のゲノムDNAは微量(1μg以下)であることが分かったため、今年度は微量DNAからでも高感度にゲノム異常を検出できるシステムを構築した。 まず、予備実験として、既知の遺伝子異常を有する細胞株からゲノムDNAを抽出し、3μg, 1μg, 500ng, 50ngのゲノムDNAから解析することを試みた。抽出したゲノムDNAからプローブハイブリダイゼーションによるターゲットキャプチャー法を用いて特定のゲノムDNA領域を選択、濃縮し、高速次世代シークエンサーを用いて塩基配列の解読を行った。この方法により、50ngのゲノムDNAから目的の遺伝子異常が検出可能となった。さらに、マウスの腫瘍移植片から抽出したゲノムDNAや、肺がん臨床検体からのゲノムDNA50ngを用いても同様の方法で解析可能であることを確認した。また、細胞株ゲノムDNAを正常リンパ球由来のゲノムDNAで希釈して解析したところ、約5%の感度で検出可能であることがわかった。 以上より、本システムにより肺がん患者末梢血由来のゲノムDNAから遺伝子異常の検出が可能であると思われる。
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