研究課題
当研究では、慢性進行性の肺線維化を特徴とする特発性肺線維症(IPF)を主な対象としている。当疾患では、慢性経過中に急性呼吸促迫症候群(ARDS)に類似した病態を呈する、急性増悪と呼ばれる更に予後不良の病態が存在することが明らかになってきた。本研究では、両疾患におけるバイオマーカーとしてのαデフェンシンの可能性に関して検討するとともに、αデフェンシンによる急性肺障害モデルの作製および抗αデフェンシン抗体やsiRNAを用いた治療実験を計画し、将来的にこれらの難治性疾患の病態解明及びその治療法開発を目的としていた。これらの計画のうち、臨床的検討ではIPF急性増悪症例の血漿および気管支肺胞洗浄液中のαデフェンシンおよびβデフェンシン濃度をELISAキットを用いて測定した。対照として、健常成人、およびIPF安定期の検体を用いた。IPF急性増悪症例のαデフェンシン濃度は、健常成人およびIPF安定期症例よりも高値であった。一方βデフェンシン濃度に変化はなかった。αデフェンシン値と各種臨床データとの相関や予後などとの関連を検討し、急性増悪バイオマーカーとしての可能性を検討してきたが、重症度や予後との相関などは見られなかった。また、基礎的検討としてαデフェンシン気管内投与モデル作成を予定していたが、モデル作製に時間がかかり、予定していた病理学的あるいは洗浄液を用いた検討が行えなかった。こちらに関しては研究期間終了後も検討を続ける予定である。現在は、臨床的検討の結果を学会発表および論文化に向けて準備中である。
すべて 2013
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Cell stress & chaperones
巻: 18 ページ: 581-590
10.1007/s12192-013-0411-5.