研究概要 |
本研究は、難治性の急性・慢性炎症性呼吸器疾患の病態改善をめざした新規吸入型治療薬の開発を目的とし、これまでの研究結果に基づき、合成免疫調節性オリゴ核酸(ODN)を医薬品素材として提唱し、生分解性ナノ粒子への封入による新規吸入デリバリーシステムの開発と評価を行った。生分解性ポリケタルナノ(PKN)粒子に封入したODNは、同濃度のフリーODNとの比較において、in vitroにおいてマウス脾臓細胞を用いた細胞増殖能ならびにサイトカイン産生量に関して同等の免疫機能性を発揮した。in vivoにおいては、マウス気道内投与後の気管支肺胞洗浄回収液の解析にて、ODN封入PKN投与群は同濃度のフリーODN投与群と比較して肺内マクロファージ集積が著明に誘導されていた。免疫調節性ODN封入PKN粒子の肺内投与の効果を検証する急性・慢性肺炎症モデルとして、珪酸粒子を投与したマウス肺線維化モデル、またエラスターゼ誘導マウス肺気腫モデルを使用した。珪酸粒子によるNADPH活性化を抑制する免疫抑制性ODNは、前投与において急性期の抗炎症作用を発揮するが、珪酸粒子暴露後の気道内投与は呼吸機能を指標とする治療効果が見いだせなかった。エラスターゼ誘導肺気腫モデルにおいては、免疫刺激性ODN(CpG ODN)の前投与群において3週後の呼吸機能(Resistance, Elastance, Complianceその他)の有意な改善が認められた。CpG ODNが関与するTLR9経路とエラスターゼによる肺気腫化の関係は、ノックアウトマウスを用いた検討で野生型と比較して3週・6週後の経時的呼吸機能が有意に低下しており、TLR9経路が肺組織の修復に関与する可能性が示されたため、エラスターゼ暴露後のODN気道内投与において気腫化進展を抑制しうる可能性が示唆された。
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