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2011 年度 実施状況報告書

インフルエンザウイルス感染におけるITAM受容体ーCARD9シグナルの役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23790919
研究機関北里大学

研究代表者

植松 崇之  北里大学, 北里研究所メディカルセンター病院, 上級研究員 (90414060)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードウイルス / 感染症 / シグナル伝達 / 免疫学
研究概要

小児や高齢者にとって、感染症は時に生命をも危険にさらす脅威である。その中でも、インフルエンザウイルス(IFV)感染症は毎年50万人を超える罹患者が発生すると言われているが、免疫が未発達な小児や免疫機能が低下している高齢者では、肺炎や急性脳症を合併する例も多い。ワクチン接種や抗ウイルス剤の投与は有効であるが、重篤な症例を寛解させるための根本的な手段とはならないことから、既存の概念に因らない新たな対策が求められている。近年、IFV感染マウス肺炎モデルやIFV感染により急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を呈したヒト検体などを用いた解析の結果、IFV感染による宿主側の自然免疫系の過剰な活性化が、インフルエンザ肺炎重篤化の一因となる事が複数のグループから示され、非常に注目を集めている。こうした背景の下、我々は新規の自然免疫活性化経路であるCARD9シグナルに注目して解析を進めた。野生型(WT: C57BL/6N)マウスおよびCARD9欠損マウスに経気道的にIFV(A/PR/8/34株)を感染させて生存率を測定したところ、CARD9欠損マウスではWTマウスに比較して、IFV感染後の生存率が有意に改善した。また、経日的に肺胞-気管支洗浄液(BALF)を採取し、炎症性サイトカイン測定、肺臓のウイルス力価測定および組織学的解析を行ったところ、CARD9欠損マウスでは、BALF中におけるIL-1βなどの炎症性サイトカイン産生が低下し、肺胞内への細胞浸潤も減少していたが、肺臓におけるウイルス力価は変わらなかった。以上の結果から、IFV感染に伴う自然免疫の過剰な活性化に、CARD9シグナルを介した自然免疫応答機構が関与することが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成23年度については、CARD9欠損によるIFV感染防御および過剰免疫応答応答への影響を生体レベルで明確にすることを目標に掲げた。WTマウスおよびCARD9欠損マウスを用いたIFV感染実験の結果、上記の通りにIFV感染に伴う自然免疫の過剰な活性化にCARD9シグナルを介した自然免疫応答機構が関与することが明らかとなり、概ね当初の目的は達成された。しかしながら、平成24年度に解析を予定していた細胞レベルでの解析に着手するまでには至らなかったことから、「(2)おおむね順調に進展している。」との評価結果とした。

今後の研究の推進方策

(平成24年度) 前年度までの研究により、CARD9欠損による生体レベルでのIFV感染防御および過剰免疫応答への影響が明確になった。そこで、平成24年度はその分子機構の解明へ向けて、IFV感染時のマクロファージや樹状細胞における炎症性サイトカイン/ケモカイン産生に関する解析を、in vitroにて実施する。また、最近の報告により、CARD9はITAM(Immunoreceptor Tyrosine-based Activation Motif)関連受容体シグナル非依存的に、ROS(活性酸素種)の産生に関与することが示されている。IFV感染マウス肺炎モデルにおいて、ROS産生は肺組織傷害の一因にもなっていることから、この点についても合わせて検討する。すなわち、WTマウスおよび CARD9欠損マウスから、IFVの標的臓器である肺を中心とした各組織由来の樹状細胞やマクロファージを単離し、マウス馴化IFV A/PR/8/34 (H1N1)をin vitroにて接触させる。IFV添加24時間後に培養上清を採取し、炎症性サイトカイン/ケモカインの産生量をELISA法等にて解析する。また、各細胞からのROS産生についても、ルミノメーターを用いて解析する。(平成25年度) 平成25年度は、CARD9の上流に位置するITAMアダプター分子であるDAP12, FcRγを欠損するマウスを用いてIFV感染実験を実施し、前年度までに観察された現象がどのITAM関連受容体-CARD9シグナル経路に依存するかを解析する。すなわち、WTマウス、DAP12欠損マウスおよびFcRγ欠損マウスに、マウス馴化IFV A/PR/8/34 (H1N1) を1/10×LD50もしくは1×LD50にて経気道感染させ、前年度までに CARD9欠損マウスにてWTマウスとの差異が観察された項目に絞って比較検討する。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度の研究費は、主としてマウスの維持と購入、ELISA・FACS解析・ウエスタンブロッティングで用いる抗体や測定分析キット、分子生物学研究用の試薬などの消耗品の購入に充てられる。また、本研究を遂行する上で、細胞の分離培養を行うための試薬やプラスティック器具の購入も不可欠である。以上の消耗品の購入には、これまでの試算から年間50万円程度を見込んでいる。また、研究協力者との研究打ち合わせや学会参加・発表などのための旅費も必須である。これには年間約15万円程度を見込んでいる。その他、論文発表のための印刷費(年間約10万円)や受託解析費用(年間約5万円)などの経費を加算し、次年度の研究費として総額80万円を使用する予定である。 なお、平成23年度は予定していた解析が概ね順調に進展し、余分な経費負担が発生しなかったため、約2万円弱の繰り越しが生じた。これについては次年度の物品費に上乗せし、経済的かつ合理的な執行に努めることとする。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 老齢マウスに存在する自己細胞反応性Th17様細胞の機能解析2011

    • 著者名/発表者名
      植松崇之、小林憲忠、鈴木達夫
    • 雑誌名

      臨床免疫・アレルギー科

      巻: Vol.55、No.4 ページ: 470-474

  • [学会発表] インフルエンザウイルス感染におけるITAM関連受容体-CARD9を介した新規自然免疫活性化経路による炎症促進機構2011

    • 著者名/発表者名
      植松崇之、小林憲忠、原博満、吉田裕樹
    • 学会等名
      第2回佐賀大学医学部分子生命科学講座リトリート
    • 発表場所
      国民宿舎虹の松原ホテル
    • 年月日
      2011年9月15日
  • [学会発表] インフルエンザウイルス感染におけるCARD9を介した自然免疫応答機構の解析2011

    • 著者名/発表者名
      植松崇之、小林憲忠、原博満、吉田裕樹
    • 学会等名
      第40回日本免疫学会総会・学術集会
    • 発表場所
      幕張メッセ
    • 年月日
      2011年11月27日

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公開日: 2013-07-10  

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