研究概要 |
平成25年度は、in vitroにおけるインフルエンザウイルス(IFV)認識に関する具体的なITAM関連受容体の同定と、このスクリーニングの結果IFVとの結合/認識が明らかとなったITAM関連受容体欠損マウスを用いたIFV感染実験を予備的に実施した。 すなわち、前者の解析については、CARD9シグナルの上流に位置する様々なITAM関連受容体-IgG融合タンパク質(ITAMR-Ig)を293細胞を用いて発現・作成し、IFVとの結合をin vitro binding assayおよび免疫沈降法により検討した。さらに、これらの受容体をアダプター分子と共に安定的に発現する2B4 NFAT-GFPレポーター細胞を作成し、固相化したIFVで細胞を刺激した場合のNFAT活性化をフローサイトメーターを用いて解析した。その結果、IgSFR2-Ig, IgSFR7-IgおよびCLR1-Igなどの複数のITAM関連受容体がIFVと結合することが示された。このうち、IgSFR2はインフルエンザウイルスの赤血球凝集素であるヘマグルチニン(HA)と特異的に結合し、レポーター細胞においてNFAT活性化シグナルを細胞内へと伝達できることが明らかとなった。また、後者の解析については、スクリーニングの結果IFVとの結合/認識が明らかとなったIgSFR2の欠損マウス(Igsfr2欠損マウス)を外部研究機関より入手し、Igsfr2欠損マウスにIFVを経気道感染させたところ、野生型マウスに比較して、IFV感染後の生存率が改善することが明らかとなった。 以上の結果を踏まえ、今後はIgsfr2欠損マウスを用いたインフルエンザ肺炎モデルマウスの解析を詳細に実施することにより、IgSFR2を介したシグナルが、IFV感染防御と宿主側の過剰な免疫応答を介した炎症増悪化をどのようにリンクさせるのかを明らかにしたいと考えている。
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