研究概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の中心的な発症メカニズムは、気道や肺の慢性炎症による障害であると考えられ、リスク因子として最も重要なのは喫煙である。研究代表者は、COPDの肺において増幅し遷延する「異常な炎症」が特定のマイクロRNAにより制御されうることを、ヒト肺線維芽細胞を用いた解析で明らかにしてきた。昨年度、研究代表者らが確立したCOPD動物モデルであるSMP30-KOマウスに喫煙曝露実験を行い、COPD発症に関わるマイクロRNAについて検討した。その結果、喫煙群では、40のマイクロRNAがSMP30-KOマウス肺で発現が有意(1.5倍以上の変化とした)に亢進しており、その中にはmiR-155及びmiR-223が含まれていた。一方、喫煙後のSMP30-KOマウス肺で発現が有意に低下しているマイクロRNAは59であり、miR-1, 133, 206といったマイクロRNAが含まれていた。本年度はこれらのマイクロRNA発現validationを定量PCR法を用いて行った。その結果、miR-155および223の変化は有意ではなかったが、miR-1, 133, 206に関しては有意な変化が確認された。従って、これらのマイクロRNAは、COPDの病態における新たなキープレイヤーであるとの仮定に基づき、同じRNAサンプルを用いて全遺伝子に対するマイクロアレイ解析を実施し、マイクロRNA発現との統合解析を行ったところ、miR-1, 133, 206が標的とするLASS2遺伝子をCOPDの病態に関わる標的遺伝子として抽出した。また、miR-206に関してin situ hypridization法を用いた発現分布解析を行ったが特異的な分布はなかった。次年度以降、これらのマイクロRNAおよび標的遺伝子であるLASS2が本モデルにおける肺気腫発症に与える役割について詳細に解明していく。
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