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2012 年度 実施状況報告書

慢性閉塞性肺疾患の病態におけるマイクロRNAの役割の解明と治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 23790922
研究機関順天堂大学

研究代表者

佐藤 匡  順天堂大学, 医学部, 助教 (10596993)

キーワード慢性閉塞性肺疾患(COPD) / マイクロRNA / 喫煙 / SMP30ノックアウトマウス / マイクロアレイ解析
研究概要

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の中心的な発症メカニズムは、気道や肺の慢性炎症による障害であると考えられ、リスク因子として最も重要なのは喫煙である。研究代表者は、COPDの肺において増幅し遷延する「異常な炎症」が特定のマイクロRNAにより制御されうることを、ヒト肺線維芽細胞を用いた解析で明らかにしてきた。昨年度、研究代表者らが確立したCOPD動物モデルであるSMP30-KOマウスに喫煙曝露実験を行い、COPD発症に関わるマイクロRNAについて検討した。その結果、喫煙群では、40のマイクロRNAがSMP30-KOマウス肺で発現が有意(1.5倍以上の変化とした)に亢進しており、その中にはmiR-155及びmiR-223が含まれていた。一方、喫煙後のSMP30-KOマウス肺で発現が有意に低下しているマイクロRNAは59であり、miR-1, 133, 206といったマイクロRNAが含まれていた。本年度はこれらのマイクロRNA発現validationを定量PCR法を用いて行った。その結果、miR-155および223の変化は有意ではなかったが、miR-1, 133, 206に関しては有意な変化が確認された。従って、これらのマイクロRNAは、COPDの病態における新たなキープレイヤーであるとの仮定に基づき、同じRNAサンプルを用いて全遺伝子に対するマイクロアレイ解析を実施し、マイクロRNA発現との統合解析を行ったところ、miR-1, 133, 206が標的とするLASS2遺伝子をCOPDの病態に関わる標的遺伝子として抽出した。また、miR-206に関してin situ hypridization法を用いた発現分布解析を行ったが特異的な分布はなかった。次年度以降、これらのマイクロRNAおよび標的遺伝子であるLASS2が本モデルにおける肺気腫発症に与える役割について詳細に解明していく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究協力施設である東京都健康長寿医療センター研究所からのSMP30ノックアウトマウスの供給が順調で、当初の計画通りの喫煙曝露実験を行うことができているため。ただ、miR-206に対するin situ hypridizationによる発現分布解析で、特異的な発現分布が捉えられなかったことから、今後の研究推進方策の見直しは必要と考えている。

今後の研究の推進方策

現在までにCOPDの病態に関わる標的遺伝子として抽出しているLASS2はセラミド合成に関わる遺伝子である。VEGFR阻害剤の投与により気腫性変化を呈した肺ではセラミドの増加が認められ、その生合成を阻害すると病変が回復することから、セラミドがCOPD発症を抑制する可能性がある。そこで、本年度は、
#1 これらセラミド合成に関与すると考えられるマイクロRNAのmimic及びinhibitorのin vivo投与系を確立し、これらの投与効果を喫煙による肺組織変化に与える影響を指標に検討し、セラミド合成の変化がCOPD発症に与える分子メカニズムを追究する。
#2 また、このCOPDモデルマウスでは、ビタミンC投与により喫煙誘導性肺気腫の改善がみられる(論文投稿中)が、そのメカニズムは不明である。そこで、ビタミンC治療介入後の肺組織でのマイクロRNA及び遺伝子発現の解析を行い、肺胞再生に関わるマイクロRNAの探索を行う。

次年度の研究費の使用計画

引き続き有能な実験補助員である三井亜樹への給与として必要額を支出する。また、上記in vivo実験に必要な試薬類、マイクロRNAおよび遺伝子の発現解析、機能解析に必要な試薬類の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Attenuation of Inhibitory PGE2 Signaling in Human Lung Fibroblasts is Mediated by PDE4.2012

    • 著者名/発表者名
      佐藤 匡
    • 雑誌名

      Am J Respir Cell Mol Biol

      巻: 47 ページ: 729-737

    • DOI

      10.1165/rcmb.2012-0057OC.

    • 査読あり
  • [学会発表] MicroRNAs associated with smoking-induced pulmonary emphysema in senescence marker protein-30 knockout mice.2012

    • 著者名/発表者名
      佐藤 匡
    • 学会等名
      American Thoracic Society International Conference 2012
    • 発表場所
      San Francisco
    • 年月日
      20120518-20120523
  • [学会発表] MicroRNAs associated with smoking-induced pulmonary emphysema in senescence marker protein-30 knockout mice.2012

    • 著者名/発表者名
      佐藤 匡
    • 学会等名
      第52回日本呼吸器学会総会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20120420-20120422

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公開日: 2014-07-24  

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