研究課題/領域番号 |
23790924
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
沼田 尊功 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (30366257)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | インクレチン / 肺傷害 |
研究概要 |
近年、新たな2型糖尿病治療戦略として脚光を浴びているインクレチンは消化管由来のホルモンであり、glucose-dependent insulinotropic polypeptide (GIP) とglucagon-like peptide-1 (GLP-1) の2つがインクレチンとして機能する。ラット肺では、気管粘膜下腺、肺動脈平滑筋およびII型肺胞上皮においてGLP-1受容体が高発現していることが報告されている。GLP-1受容体はヒトにおいて、膵臓、肺、心臓、腎臓および脳に発現している。ヒトII型肺胞上皮細胞を使用した実験では、II型肺胞上皮細胞の重要な機能であるサーファクタント分泌がGLP-1受容体アゴニスト、アンタゴニストにより制御されることが報告されている。つまりインクレチンは、糖代謝だけでなく肺の機能制御においても重要な役割を担う可能性がある。 そこで我々は、各種培養細胞において、まずはGLP-1受容体およびGIP受容体が発現しているか否かについての詳細な検討を行った。ヒト肺腺癌由来の継代細胞A549、気管支上皮由来の不死化細胞Beas2B、および手術検体より得た正常ヒト気管支上皮細胞と肺線維芽細胞、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞由来のHUVECを用いた。各培養細胞よりRNAを抽出し、RT-PCR法によりそれぞれのmRNA発現を検討した。GAPDHのプライマーを用い、RNA抽出に問題がないことを確認し、その後、GLP-1受容体およびGIP受容体のプライマーを用いて検討した。結果として、GLP-1受容体およびGIP受容体ともに明らかな発現は認められなかった。今後、肺組織をホモジネートしたものや、気道や肺組織フラグメントを用いた,より生体に近い実験系で受容体発現を確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの各種培養細胞を用いた検討では、目的としたインクレチン受容体のmRNAの検出が困難であった。過去の報告では、免疫組織学的に肺でのGLP-1受容体発現が確認されており、in vitroの細胞培養系であることが、今回結果に影響を与えている可能性があると考えている。そこで細胞を分離培養する前の気道や肺組織を用いて検討が必要であり、次年度の検討課題と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
生理的条件化での検討をするため、凍結した肺組織や気道の一部をそのまま使用する。蛋白発現はホモジネートを作成してwestern blotting法で、mRNAもこれら組織から直接分離しRT-PCR法にて検討する。さらに気道や肺の凍結標本を用いて、免疫蛍光染色により、インクレチン受容体の発現を検討する。生理的な条件でのインクレチン受容体の発現を確認した上で、当初の予定にあった、poly-ICを用いたウイルス感染モデルにより誘導した肺や気道上皮細胞の傷害・アポトーシスが、GLP-1受容体刺激により影響を受けるかどうかを検討する。気道から気道上皮細胞と上皮化組織が一塊となったフラグメントを作成し(上皮細胞は基底膜上)、より生理的な条件での検討が必要ではないかと考えている。 poly-ICを用いたウイルス感染モデルでの、肺、気道上皮細胞傷害へのインクレチンの抑制効果を認めた場合には、さらに動物実験モデルでの検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養にかかる各種物品(継代細胞、細胞培養液、プラスチック物品など)、検出用プライマー、抗体、各種試薬の購入費用とその後の進捗状況により、次年度研究予定である動物実験にかかる諸費用を考えている。また、学会発表にかかる諸費用も予定している。
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