研究課題/領域番号 |
23790925
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
木村 聡一郎 東邦大学, 医学部, 助教 (60408870)
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キーワード | cyclic di-GMP / Quorum sensing / 肺炎 |
研究概要 |
本研究では、c-di-GMPを介する病原性制御機構を対象とした新規治療法のターゲット分子と病原因子制御薬を探索し、マウス感染モデルを用いて評価を行う予定である。本年度は、昨年度までの検討に引き続き、以下の検討を加えた。 1.二つの病原性制御機構(c-di-GMPシグナル伝達機構とQuorum sensing(QS)機構)の関連性について c-di-GMPシグナル伝達機構とQuorum sensing(QS)機構は、共に病原性制御機構であるがシステムとしては全く異なるものである。これまでの検討により、両システムにおいて関連性が見いだされており、QS機構はpde遺伝子の発現に対して正に制御しており、pde遺伝子は直接的もしくは間接的にQS機構を負に制御していることが分かった。本年度は、これらを裏付けるために変異株に対する遺伝子相補株を作成し、各種検討を加えた。 2.フローセルと共焦点レーザー顕微鏡を用いたバイオフィルム形成の観察 昨年度導入した共焦点レーザー顕微鏡を用いてバイオフィルム形成を経時的に観察するために、今年度はフローセルシステムを導入した。昨年度はGFP発現緑膿菌を用いてバイオフィルム形成を観察したが、本年度からはGFP非発現株を用いたバイオフィルム形成の観察を行うべく、COCRM法(筑波大学野村研より)を応用した観察システムの構築を行った。これにより、本研究で作成した遺伝子変異株や臨床分離株などのGFP非発現株でもバイオフィルム形成を観察できることができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記「研究実績の概要」に記載されている「項目1」については、これまで遺伝子欠損株に対して検討を行っていたが、その欠損に対する遺伝子相補株の作成が成功できていなかった。今回、その遺伝子相補株を作成し、野生株と遺伝子相補株がほぼ同様の傾向にあることが示すことができた。また「項目2」については、バイオフィルム形成の観察基盤を整える目的で各種システムの導入を試み、これまで検討することのできなかった遺伝子欠損株での観察が可能となり、一部興味深い結果を得ている。 一方、病原性制御機構の主要な制御分子であるc-di-GMP(c-di-GMPシグナル伝達機構)やホモセリンラクトン(QS機構)は宿主側の免疫機構を修飾する作用があることが近年報告されている。本研究ではターゲット遺伝子欠損株の宿主側への影響も検討しているため、遺伝子欠損および上記制御分子の宿主免疫への影響を調べる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に加えて、以下の点については研究計画に修正・追加して実施予定である。 1.バイオフィルム形成の検討 GFP非発現株での経時的観察が可能となったため、これまで作成している遺伝子欠損株を用いてバイオフィルム形成への影響を調べる予定である。 2.感染における宿主側因子の評価 2種の病原性制御機構が宿主免疫作用へ及ぼす影響を明らかにする。具体的には、これまで使用してきたマウス肺炎モデルを用いて、各種変異株による炎症反応がどのような細胞種へ影響を及ぼすのか、それらは病原性制御分子と関連するものなのかを調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度までの結果をもとに、バイオフィルム形成に及ぼすpde遺伝子の関与を検討するためフローセルシステムを導入したが、システムの構築と条件検討に想定以上の時間を費やした。またマウスを用いて候補遺伝子欠損株を評価する予定であったが、欠損株を得ることができなかった。上記理由からバイオフィルム関連試薬およびマウスの購入を予定通り実施できなかったため、未使用額が生じた。 フローセルシステムの構築は既に終えているため、引き続き条件検討を行う予定である。またマウス肺炎モデルを用いた感染実験を予定している。よって未使用額はこれらの検討を行うための経費に充てることとしたい。 具体的には、宿主側因子の解明のため、抗体の購入に30万円程度、マウスの購入費用に50万程度、 バイオフィルム解析の消耗品購入に20万円程度、その他の消耗品として40万円程度を見込んでいる。
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