研究課題/領域番号 |
23790928
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研究機関 | 静岡県立静岡がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
芹澤 昌邦 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (00569915)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | GLUT1 / 治療効果予測マーカー / 肺がん / 個別化医療 / 分子標的型抗がん剤 / mTOR阻害剤 / グルコース / PET |
研究概要 |
GLUT1を肺癌治療におけるmTOR阻害剤の「治療効果予測マーカー」として臨床応用するための理論的根拠の確立および、mTOR阻害剤の感受性規定因子の探索による新規の「治療効果予測マーカー」の開発を目的に本研究を行った。17種類の非小細胞肺癌細胞株(腺癌:12、扁平上皮癌:5)を用い、GLUT1の発現レベルと[18F]FDGの集積レベルとの関連性について検討した結果、肺癌細胞株においても他の癌種同様に相関が認められた。次に、非小細胞肺癌細胞株のmTOR阻害剤(temsirolimus, Ku-0063794)に対する感受性およびmTOR阻害剤の[18F]FDGの集積に対する影響について検証を行った。その結果、Ku-0063794に対する感受性(IC50値)と、Ku-0063794による[18F]FDGの集積量の減少率の間には明確な相関関係が認められた。この結果は、mTOR阻害剤の効果予測に、[18F]FDGの集積量を検出するPETを利用できる可能性を示唆しているものと考えられる。PTENを欠損している細胞株では、そのGLUT1の発現レベルは中等度であるにもかかわらず、[18F]FDGの集積量はGLUT1の発現レベルが最も高い細胞株の2倍以上の極めて高い値を示し、他の細胞株とは明らかに異なる傾向が見られた。また、肺癌臨床検体を用いた免疫組織染色においても、PTENの発現強度とPETにおける[18F]FDG集積量は逆相関にあることが明らかになり、PTENが腫瘍におけるグルコースの取り込みに影響を与える重要な因子であることが示された。さらに、この細胞株は両mTOR阻害剤に対しての感受性が最も低く、Ku-0063794による[18F]FDGの集積量の減少率も低い傾向があることから、PTENがmTOR阻害剤の感受性規定因子である可能性が考えられ、次年度さらなる検証を進める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
mTOR阻害剤に対する感受性と、mTOR阻害剤による[18F]FDGの集積量の減少率に相関があることを見出し、mTOR阻害剤の効果予測にPETを利用できる可能性を示唆することができた。またPTENがmTOR阻害剤の新規感受性規定因子になる可能性を示すことができ、次年度におけるさらなる検証につなげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度の研究において得られた細胞株を用いた研究結果について確証実験を進めるとともに、ヌードマウス移植腫瘍モデルおよび臨床検体を用いた検証を予定している。また、mTOR以外のGLUT1の上流分子を標的とした分子標的型抗がん剤についても、mTOR阻害剤と同様の方針で「治療効果予測マーカー」の開発を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当センターで第I層試験が行われるGLUT1の上流分子PI3Kを標的とした新規分子標的型抗がん剤について、次年度より基礎検討での使用が可能となる。そこで、次年度よりGLUT1がその薬剤の「治療効果予測マーカー」になり得るか検証し、さらに新規感受性規定因子の探索による特異的な「治療効果予測マーカー」の開発を開始する。この研究を本年度の研究結果についての確証実験とともに並行し進めるために、次年度への研究費の配分を増やした研究計画に変更した。
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