[18F]FDGの集積量を検出するPETを、肺癌治療におけるmTOR阻害剤の「治療効果予測マーカー」として用いることを目的に、 [18F]FDGの集積に対するmTOR阻害剤の阻害作用の機序について解析を行った。 本研究においては、作用機序の異なる2種類のmTOR阻害剤(mTORC1阻害剤:テムシロリムス、mTORC1/mTORC2阻害剤:Ku-0063794)を用い、 [18F]FDGの集積に対する両薬剤の阻害効果を比較することで、[18F]FDGの集積に関与するシグナル伝達系の特定を試みた。mTORC1/mTORC2阻害剤であるKu-0063794はテムシロリムスに比べ高い増殖抑制効果を示したことから、mTORC1/mTORC2 の両シグナル伝達系の阻害が、効果的な増殖抑制において必要であることが示された。一方で、[18F]FDGの集積に対する阻害作用においては、テムシロリムスの示す阻害効果がKu-0063794に比べ顕著に高く、mTOR及びその下流のS6のリン酸化についても、テムシロリムスはKu-0063794より高い阻害効果を示した。上記の結果より、mTORC1はmTORおよび下流分子の活性化に関与しているだけでなく、[18F]FDGの集積に強く影響を与えていることが明らかになった。この結果は、テムシロリムスを含むmTORC1 阻害剤の腫瘍における作用を評価するうえで、PETを用いた[18F]FDGの集積量の変化の測定が有用である可能性を示唆している。 2年間の本研究により非小細胞肺癌における[18F]FDGの集積に関与する分子機序、mTOR阻害剤と[18F]FDGの集積との関連性そしてPTENのmTOR阻害剤の感受性規定因子としての可能性について明らかにすることができた。本研究の成果については、現在査読のある海外専門誌に投稿中である。
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