本研究では、早期に腎障害を発見するためのバイオマーカーを探索することを目的としていた。申請者のこれまでの研究で、透析患者の血漿成分を透析前後で比較を行い、マーカー候補を複数見出していた。本研究では、(1)診断のためのマーカーに関する研究、(2)診断のための感度と特異度を向上するマーカーの選別、(3)診断マーカーの構造解明を行うことで、早期腎障害診断マーカーを発見することを目指した。23年度はマーカー候補成分のCKD患者の病期ステージごとの動態についての研究と診断のための感度と特異度を向上するマーカーの選別研究を計画していた。しかし、震災の影響で使用予定であった質量分析装置は破壊されたため、使用できなくなった。そのため使用可能な共通機器である質量分析装置を使用することになったが、使用申請やトレーニング等により当初の研究予定は大幅に遅れをとった。そこで平成23年度は慢性腎臓病(CKD)患者の血漿と尿試料の回収と、前処理条件と測定条件の検討を行った。検体を回収した患者は、CKDであり腹膜透析治療を受けている患者であるため、測定試料として透析治療前と透析治療後の血漿と尿、さらに腹膜透析廃液を回収している。得られた血漿、尿、透析廃液を用いて、前処理法と測定条件の検討を行った。その結果、前処理・測定条件の確立には、まだ検証することが残っているが、血漿、尿、腹膜透析液から目的とする腎臓病に関与する成分をクリーンアップすることが可能であることが分かった。本研究が目的とする成分は、これまで単一成分を放射性免疫測定や酵素法免疫測定で測定されていたが、本研究の方法で多成分を同一試料から測定できることが分かった。この方法を用いることで、腎臓代謝の状況を判断することができ、腎障害を早期に発見できる可能性が示された。
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