研究課題/領域番号 |
23790933
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
アブデルガワッド サマー 新潟大学, 医歯(薬)学総合研究科, 研究員 (50529469)
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キーワード | 膜性腎症 / プロテオミクス / レーザーマイクロディセクション / 質量分析計 / 糸球体 |
研究概要 |
正常と膜性腎症のそれぞれ30症例の腎組織切片から、レーザーマイクロディセクションを使い、糸球体を集めた。50から55の糸球体切片から、1マイクログラムのタンパク質を得た。集めた糸球体を、トリプシンで消化し、ステージチップ(C-18カラム)でトリプシンと塩を取り除いてペプチドを精製した。この後、試料をハイパフォーマンス質量分析装置(Thermo Orbitrap Elite)で分析した。その結果、正常の症例からは、再現性良く平均2640のタンパク質とそれに対応する10000以上のペプチドを同定した。一方、膜性腎症の症例からは、ある程度のばらつきがあるものの、1750から2050のタンパク質を同定した。これら二つのプロテオームを比較し、膜性腎症に見つかって、正常の症例には見つからなかったタンパク質を430列挙することができた。これによって、膜性腎症の病態、病因の解析に大きく貢献できるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
質量分析計と腎生検試料からのサンプル調整の改良により、質量分析計解析による膜性腎症および正常の糸球体のタンパク質同定数が予想の数倍に増加(数100から2000種類に)した。また、そのラベルフリー定量法の進歩に伴い、膜性腎症の病態生理への関与、抗原候補となるタンパク質が急増した。そのために、平成24年度に行っていた抗体による検証対象タンパク質数が予定の約10倍程度増加し、さらに膜性腎症の病因・病態の詳細の解明が可能になったと考えられた。しかし、その検証に時間がかかることになり、全体の研究が遅れているが、反面、病態に関与するタンパク質候補が増えたこと で、膜性腎症のパスウェイの解析が可能となると期待され、研究がさらに新しい方向にも発展した。以上のような研究の発展が理由で、その結論を今年度末までにまとめることが難しくなった。なお、未使用額は検証研究に必要な抗体や解析ソフトなどの購入に使われる。
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今後の研究の推進方策 |
正常の糸球体と膜性腎症の糸球体で有意に異なるタンパク質のペプチドのスペクトラムの解析を進めている。病態生理学的知見から、膜性腎症の病因に関わりうる候補タンパク質を選び出す。並行して、ばらつきを少なくするため、より多くの症例を、特に膜性腎症の症例を増やして解析を行う。これによって、より信頼性の高い膜性腎症に特異的なタンパク質群を決定する。バイオインフォマティクスを用いた解析により、これらのタンパク質パスウェイ、機能解析、タンパク質間相互作用を明確にする。このタンパク質に対する抗体を使った免疫染色、ウェスタンブロットによって、膜性腎症の病因における候補タンパク質の役割を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
レーザーマイクロディセクションのメンブランスライド(10万円)、レーザーマイクロディセクションのチューブ(7万円)、質量分析計の消耗品(12万円)、抗体(16万円)、学会出席発表(40万円)を予定している。
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