研究課題/領域番号 |
23790936
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山田 和徳 金沢大学, 大学病院, 助教 (90397224)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 多発性嚢胞腎 / モデルマウス / 局在異常 |
研究概要 |
我々は、多発性嚢胞腎(ADPKD)の原因遺伝子のひとつであるPKD2遺伝子の変異(697fsX)を有する一家系を見出した。この変異によりpolycystin-2(TRPP2)はC末端を欠損し、局在が小胞体膜上(ER)から細胞膜上(PM)へ変化することで、TRPC3およびTRPC7 と相互作用し新たなチャネル活性を獲得することを報告した。本研究では、この局在異常型TRPP2のモデルマウスを樹立することにより、(1)他のTRP チャネルとの相互作用の観点から嚢胞形成の発症機序を解明すること、(2)TRPC3 阻害薬であるピラゾール化合物の嚢胞形成抑制作用について確認し新規治療薬のターゲットとなり得るかを検討することを本研究の目的とした。 本年度は、TRPP2 697fsXまたは野生型のTRPP2を有するトランスジェニックマウスの作製を行った。京都大学との共同研究により、発現用のプラスミドであるpCAGGS-myc-hPKD2(697fsX)、pCAGGS-myc-hPKD2を作製した。次に受託先のTransgenic.incにおいてDNA断片を作製し、C57BL/6Jマウスの受精卵にマイクロインジェクションを行った。今年度末の時点で、TRPP2 697fsXのトランスジェニックマウスにおいてオス2匹、メス3匹の、TRPP2野生型のトランスジェニックマウスにおいて、オス2匹のファウンダーマウスが得られた。 TRPP2 697fsXおよび野生型TRPP2いずれにおいてもファウンダーマウスが得られた。目標であった年度内でのF1マウスの作製には至らなかったが、その前段階まで達成することができた。今後、局在異常を有するTRPP2 697fsXトランスジェニックマウスを解析することで、嚢胞形成の発症機序を解明することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、TRPP2 697fsXおよびコントロールとなるTRPP2野生型のトランスジェニックの作製を目標としていた。しかし、ゲノム解析にてファウンダーマウス作製の確認が年度末までずれ込んだため、目標としていたF1マウスまで作製に至らなかった。しかしながら、現在ファウンダーマウスよりF1マウスの作製を行っており、全体の研究計画の中では、大きな遅れとは考えていないため、達成度をやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降は、TRPP2 697fsXおよびTRPP2野生型トランスジェニックマウスの作製を完了させ、表現形および病理学的検討を行う。まず、作製したトランスジェニックマウスの腎臓を胎生期を含め、4週齢ごとに評価し、どの週齢より嚢胞腎形成が起こるかを評価する。さらに、肝嚢胞、大腸憩室などの他の臓器の病変も評価する。また、TRPP2 697fsX の発現の確認;腎臓、肝臓、血管、膵臓、腸管上皮など全身の臓器でのTRPP2 697fsXの発現を、RT-PCR 法、ウエスタンブロット法、免役染色法を用いて確認する。 嚢胞形成が確認されれば、平行して腎機能、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン(RAA)系の評価を行う。具体的には、血尿、蛋白尿、血清クレアチニン、血清レニン活性、血清アルドステロン濃度など腎機能を1ヶ月ごとに評価する。次に、嚢疱形成におけるTRPC3/TRPP2 697fsX ヘテロ重合体の関与についての検討を行う。 まず、RT-PCR 法、ウエスタンブロット法を用いて、腎尿細管上皮および腎外の各臓器における、TRPP2 697fsX の発現を確認する。さらに、免疫染色法を用いてTRPP2 697fsX がTRPC3 と細胞膜上の同一の部位に存在するかを確認する。上記が確認された上で、TRPC3/TRPP2 697fsX ヘテロ重合体(図3)の有無について、電気生理学的手法およびfura-2 を用いた細胞内カルシウム測定の手法を用いて評価する。これらの実験は、京都大学大学院工学研究科の森泰生教授と共同研究で行う。さらに、選択的TRPC3チャネル阻害剤であるピラゾール阻害剤を投与し、腎嚢胞の抑制作用があるかどうかを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、トランスジェニックマウス作製費用として、700千円を計上していたが、ファウンダーマウスの作製段階までしか至らず、24年度内に完成予定となった。従って、トランスジェニック作製費用の一部のみ本年度の費用として使用し、残りは24年度に使用する方針となった。それにより、作製費用および輸送費を含めた850千円を24年度に繰り越した。 本年度は、マウス作製費用、輸送費など850千円に加え、マウスの飼育費として、350千円を予定している。また、マウスの解析の為の、抗体、組織染色用試薬、生化学検査用試薬など多くの試薬は新たに購入する必要があり、それらの試薬代として24年度に150千円、パッチクランプおよび細胞内カルシウム測定の際の試薬代として24年に150千円を予定している。又、京都大学森教授との研究打ち合わせの為の国内旅費として50千円を予定している。
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