研究課題
我々は、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)患者より、PKD2遺伝子変異(697fsx)を有する1家系を見出した。この変異により、polycystin-2 (TRPP2)はC末端を欠損し、局在が小胞体膜上から細胞膜上へと変化する。この遺伝子変異により、697fsxは細胞膜上で、TRPP3およびTRPP7と新たなチャネルを形成することを報告した。本研究では、この局在異常型TRPP2のモデルマウスを樹立することにより、①嚢胞形成の機序の解明、②TRPC3阻害薬であるピラゾール化合物の嚢胞形成抑制作用について確認し新規治療薬のターゲットとなり得るかを検討することを本研究の目的とした。24年度に、TRPP2 697fsxまたは野生型のTRPP2を有するトランスジェニックマウスを作成し、12月齢以上経過したマウスを用いて組織学的検討を行った。予備的検討において、TRPP2 697fsxにおいて、尿細管拡張、血管拡張所見を認めた。25年度は、組織学的検討をさらに詳細に進めた。6月-12月齢のTRPP2 697fsxトランスジェニックマウスにおいて、嚢胞形成が確認された。また、拡張した尿細管と血管を区別するため、尿細管マーカー(ウロモジュリン)および血管内皮マーカー(CD31)を用いて免疫染色し、それぞれの局在を確認した。一方で野生型のTRPP2を有するトランスジェニックマウスにおいても少なくとも12月齢において嚢胞形成が確認された。先行研究においてもpolycystin-2のトランスジェニックマウスにおいて嚢胞形成が確認されており、矛盾しない結果と考えられた。
4: 遅れている
TRPP2野生型および変異型トランスジェニックマウスの完成が遅れたことに加え、嚢胞形成が当初の予測より遅いことが判明し、半年以上の長期間の観察が必要であった。また、免疫組織学的検討において条件設定に時間がかかり、当初の予定より遅れていると判断した。
今後の研究26年度は、表現形および病理学的検討を週齢ごとに詳細に行う。4週齢以降、4-8週ごとに組織を評価し、24週齢以前でも嚢胞形成が起こるか確認する。さらに、腎臓以外(特に血管病変)についても評価する。平行して、腎機能、レニンーアンギオテンシンーアルドステロン(RAA)系の評価を行う。さらに嚢胞形成におけるTRPC3/TRPP2 697fsxヘテロ重合体の関与について評価を行う。採取した腎臓よりmRNAを採取し、RT-PCR法を用いて、TRPP2 697fsxおよびTRPC3の発現を確認する。またウエスタンブロット法、免役染色を用いて、蛋白レベルでもこれらの発現および局在を確認する。さらに電気生理学的手法およびfura-2を用いた細胞内カルシウム測定の手法を用いて評価する。さらにピラゾール化合物を投与し、TRPC3のチャネル活性を抑制することにより、嚢胞抑制作用があるか確認する。
トランスジェニックマウスの作成が当初の予定より約半年遅れたため、平成25年度後半より免疫組織学的検討を行った。その結果、嚢胞形成が当初の予測より遅いことが判明した。その結果、詳細な組織学的検討や腎機能の評価などが遅れた。また、電気生理学的検討およびピラゾール化合物の投与実験を次年度に行うことになったため、未使用額が生じた。電気生理学的検討、ピラゾール化合物の投与および学会発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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